オンライン学習、入院中もできる? コロナで定着したけど、調べると学校や地域によって対応ばらつき

一時退院中で自宅で療養している小学生に、マンツーマンでオンライン授業をする院内学級の教師=神戸市中央区港島南町1

 闘病中の子どもたちが、入院先の病院や自宅から、通っていた学校の授業などにオンラインで参加することについて、「現状が知りたい」という声が神戸新聞社の双方向型報道「スクープラボ」に寄せられた。調べてみると、新型コロナウイルス禍でオンラインの活用が広がる一方、学校によって対応に差があることも分かった。(石沢菜々子)

 投稿を寄せた女性は、子どもの入院に伴い、それまで通っていた小学校から、入院先の院内学級に籍を移した。治療の励みになるよう、移籍後も小学校に一部の授業などへのオンライン参加を希望したが、なかなか実現しなかった。

■こども病院、院内学級で積極活用

 療養中の子どもたちに、オンライン学習は、どのように活用されているのだろうか。小児がんなど高度な治療のため、兵庫県内外の子どもたちが入院している兵庫県立こども病院(神戸市中央区)を訪ねた。

 病棟内にある院内学級。教師たちが個室で、パソコンの画面越しに漢字の成り立ちや都道府県の位置を教えていた。授業を受けていたのは、一時退院し、自宅で療養中の子どもたちだ。

 この院内学級は神戸市立友生支援学校(同市兵庫区)の分教室で、体調や希望により、小中学生が学べる。利用者は、入院状況に応じて20人前後で推移している。コロナ禍以前、一時退院中はプリント学習が中心だったといい、小野恵幸教頭は「より体調が安定して、学習に集中しやすい一時退院中も含め、学びの選択肢が広がった」と話す。

 動物園の協力で「オンライン遠足」が実現するなど、行事や社会科見学でも活用が進む。

 一方、もともと通っていた学校との交流は、本人の希望や学校側の事情もあり、頻度や内容はさまざまという。オンラインでの授業や行事への参加、休み時間のクラスメートとの会話が可能な子もいれば、「対応が難しい」と協力を得られないケースもある。院内学級の教諭らは「可能な方法があるのなら私たちも一緒に考えていきたい。今は経験を積み重ねている段階だ」とする。

■保護者「学校とのつながり、闘病の力に」

 学校側の対応について、いくつかの教育委員会に問い合わせたところ、担当者は「児童生徒の体調や希望があり、対応はケース・バイ・ケースだ」と口をそろえた。ただ、中には「学びを保障するために、院内学級への移籍がある。移籍後の学校との連携は基本的に想定していない」とする教委もあり、学校側の姿勢に影響している可能性がある。

 一方で、尼崎市教委は、療養中の児童生徒に対し、希望があれば、学校の授業などに参加できる専用の端末などを貸し出している。「学校、院内学級のどちらに在籍しているかにかかわらず、その子どもの学びを保障するため」という。

 文部科学省は、GIGAスクール構想の説明で「入院中の子どもと教室をつないだ学びなどがいつでも可能」とうたう。ただ、オンライン授業を出席と認めるかどうか、校長の判断に委ねられている現状もある。同省の担当者は「現在、オンラインの活用の実態調査をしているところ。課題を把握したい」とした。

 投稿を寄せた女性の子どもは、短時間のオンライン交流だったが、「わずかな時間でも、子どもは生き生きとした表情で、前向きになれた。治療が難しい子にとって、入院先や自宅からオンラインで学校とつながることがどれだけ闘病の力になるか。多くの人に知ってもらいたい」と女性。その上で、「オンライン学習での学びを自治体や学校現場に委ねるのではなく、国の主導で推進してほしい」と注文した。

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