個性派地ビール北陸に続々 夏本番へ各社売り込み図る

能登ヒバで香り付けされた地ビール=金沢市内

 北陸で地ビールの開発が相次いでいる。金沢市の木材卸問屋は石川県木「能登ヒバ」で香り付けしたアルコール飲料を作り、地ビール会社は食パンを原料に小麦の香りを楽しめる商品を発売した。新型コロナの影響が落ち着き、ビアガーデンや飲食店が徐々ににぎわいを見せる中、各社はビールの需要が高まる夏本番に向けて売り込みを図る。

  ●県産材PRに活用

 能登ヒバを使ったビール「森のビィル『ひばのわ』」を発売したのは、木材流通業のフルタニランバー(金沢市)だ。能登ヒバの木材チップを漬け、ヒバの爽やかな香り付けに成功した。古谷隆明社長は「飲むと、森の中にいるような感覚になる」と説明する。

 アルコール度数は9%。麦芽風味が強く、濃厚な甘みが特長の「バーレーワイン」に仕上げた。オリエンタルブルーイング(金沢市)が製造する。現在は同市の飲食店「醍庵(だいあん)」で販売しており、今後は他の飲食店や土産店、ECサイトなどに取扱先を広げる。

 フルタニランバーは、需要が減少している県産材の利用促進策として、能登ヒバの楽器を製作するなどしてきた。アルコール飲料は音楽イベントと親和性があるとし、古谷社長は「木の価値を五感で味わってもらい、県産材の需要拡大につなげたい」と話した。

  ●食品ロスを削減

 クラフトビールの製造、販売を行う金澤ブルワリー(金沢市)は、食パンを加えて醸造したビールを開発した。小麦の芳醇(ほうじゅん)な香りと甘みが感じられる。

 堅くなるなどして廃棄される予定の地元パン店の食パンを使い、主原料となる麦芽を減らした。食品ロス削減にもなり、「モッタイナイ金澤ブレッドビール」と名付けた。金沢市円光寺3丁目の金澤ブルワリー工場や同社ホームページで販売する。

 同社は過去にも、石川県産のユズや加賀棒茶を使ったビールを開発しており、担当者は「石川ならではの商品として発信したい」と話した。

  ●富山地ビール販売が好調

 富山県内の地ビールは売り上げが好調に推移している。立山黒部貫光(富山市)の地ビール「星の空」は今年4月、前年同期比で2~3倍に伸びた。

 黒部川の伏流水で仕込む「宇奈月ビール」も売れ行きが伸びている。22年度から需要が回復傾向となり、今年度の醸造量はコロナ前に迫る80キロリットルを見込む。

食パンを加えて醸造した地ビール=金沢市内

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