伝えたい「踊瀬のお姫様」の話 老人クラブ「和む会」が墓を清掃、整備 佐世保・吉井

清掃後、設置した看板と共に写真に納まる「和む会」メンバーら=佐世保市吉井町(同会提供)

 「踊瀬のお姫様」と呼ばれた領主の娘の墓が長崎県佐世保市吉井町踊瀬にある。流行病の患者の世話をして病死したとされる「お姫様」の話を伝えていこうと同町の老人クラブ「和む会」(前田勝利会長、約40人)の有志らが、墓の清掃、整備に取り組んでいる。
 地域住民や郷土史などによると、500年以上前に踊瀬を治めていた領主の娘の墓。娘は、流行病の治療に奔走する医者と共に昼夜を問わず病人の世話をし、村人たちから「お姫様」と呼ばれ慕われた。しかし、娘も病に侵され亡くなった。村人たちは娘を弔い大木の下に葬り、その後娘の墓に並べて医者も葬られたという。現在同墓地では全部で6基の墓が確認されている。
 十数年前までは毎年盆前に地域の人らが墓地を清掃していたが、人手不足などでいつしかしなくなり荒れていった。前田会長にとっては幼い頃から母に連れられ清掃をし、試験の前には手を合わせ合格を祈った場所だった。
 そんな思い出のある場所が荒れ地になっていることに心を痛め、会長に就任した翌年の2018年から年に1回、クラブのメンバーに声をかけ掃除をすることに。新型コロナウイルスの影響で今年、3年ぶりに実施した。

墓に続く道に設置した竹製の階段を紹介する前田会長=佐世保市吉井町

 清掃にはメンバー9人が参加。草刈りや竹の伐採に加え、墓に続く道に竹製の階段を整備。高さ約130センチ、幅約40センチの墓の説明板も設置した。今後は墓に続く道の入り口に案内板を設置する予定だという。 墓を見た父が「長男は医者になす」と決め、実際に兄など親戚4人が医者になったという同クラブメンバーの松瀬須磨子さん(92)は「掃除してきれいになって、お姫様もお医者様も喜んでいると思う」と笑顔。前田会長は「自分が元気なうちは、地域の人の協力を得ながら活動を続け、歴史を継承していきたい」と穏やかな口調で話した。

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