【タイ】ピター氏の議員資格停止か、株保有問題で[政治]

タイの選挙管理委員会は12日、首相就任を目指す前進党のピター党首のメディア株保有問題について、判断を憲法裁判所に委ねる決断を下した。ピター氏は下院議員としての資格が停止される可能性があり、13日に国会で実施される予定の首相選出投票の行方に不透明感が強まった。

ピター氏はメディア企業「iTV」の株式4万2,000株を所有しているとされる。選挙管理委員会には、メディア企業の株式を所有している候補者が下院選挙に立候補することを禁止する下院議員選挙法に違反しているとの申し立てがあった。

同委員会は憲法裁に対し、判断が下されるまでの間はピター氏の下院議員としての資格を停止することを推奨した。タイで開催中の国会では、13日に首相選出に向けた投票が実施される予定。同氏の議員資格が停止された場合、前進党とタイ貢献党を中心とする連立は首相候補を失うことになる。

憲法裁判所は12日、選挙管理委員会の訴えについては同日には審議せず、手続きを開始するとのみ発表した。上院の総務会は同日「ピター氏は依然として下院議員であり、首相に立候補する資格がある」との声明を発表。ピター氏の議員資格を停止すべきだとの意見は、「現状では選挙管理委員会の見解にすぎない」としている。タイ貢献党幹部のペートンタン氏は選挙管理委員会の決定を受け、「ピター氏が連立8党の首相候補であることに変わりはない」とコメントした。

■前進党支持者の反発は必至

選挙管理委員会の決定を受け、前進党は「委員会による職務の放棄であり、違法行為だ」と非難。選挙管理委員会が調査パネルでピター氏に弁明する機会を与えず、憲法裁判所に判断を任せたことを批判した。

首都バンコクでは13日の首相選出投票を前に、前進党の支持者を中心とした複数の団体が国会前でデモを実施する予定とされる。ピター氏の出馬自体が難しくなっていることで、これらの勢力が反発を強めるのは避けられない情勢となった。

在タイ日本国大使館は12日、同日と13日に政治集会が実施される見込みだと発表。12日はMBK前のスカイウオーク、13日は国会議事堂周辺で実施されるとみられることを踏まえ、「不測の事態に備え、集会が行われている現場周辺には近づかないよう」呼びかけた。

■13日午後5時に投票開始へ

タイで第30代となる首相選出を巡っては、5月の総選挙で最多の議席を獲得した前進党のピター党首を推薦することで、第2位のタイ貢献党も含む連立8党が合意していた。一方、選挙後にはピター氏の株式保有疑惑に関する調査が選挙管理委員会に申請され、複数の上院議員が同氏への不支持を表明。上下院合わせて過半数の支持獲得に、不透明感が強まっていた。13日に予定されている首相選出投票で、過半数を獲得できた候補がいない場合は再投票となる。このため、一連の動向は、現与党勢力が次期首相の選出を引き延ばしし、現政権を存続させる延命策との指摘も出ていた。

プラユット首相は11日に政界からの引退を表明。同氏が所属する国家建設タイ合同党(UTN)は、「プラユット氏が引退を表明したのは、首相として続投を狙い連立政権樹立を画策しているという臆測を払拭するため」だと説明した。

13日の投票は午後5時に開始される予定。上院では投票前に2時間の協議が実施されるほか、上下院合同で4時間の審議が実施される。

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