39%

 〈自分の意思を全く用いないで行動する〉〈すべての仕事を一律に処理するだけで融通が利かない〉〈惰性的に物事を行う〉…これでもか、と言わんばかりだ。警戒心や自戒の念を通り越して書き手の“敵意”すら感じる。辞書で「機械的」を引いてみた▲まとめにこう書き足されている。〈整ってはいるが人間的な暖かみの無い意にも用いられる〉。人間の仕事は温かさや熱を失ってはいけない…そんなメッセージをページに刻んだ編集者がこの出来事を知ったらどんな顔をするだろう▲4歳の娘に対する傷害致死容疑で母親が逮捕された三重県の事件で、同県が、虐待に関する過去のデータを職員の判断に生かす人工知能(AI)の見立てを参考に「一時保護」措置を見送っていたことが分かった▲児童虐待対応でのAI活用には、経験の浅い職員の判断のぶれを補正したり、児相の負担を軽減したりする効果が期待されているようだ。三重はこの分野の“先進地”とされている▲AIの判定は「保護率39%」だったそうだ。専門家には専門家なりの数字の読み方があるのだろう。ただ、子どもは数字ではないし、困難に直面している当事者には「確率」は意味がない。目の前の危険や危機はいつだって「1分の1」だ▲人間が仕事をする意味を忘れずにいたい。(智)

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