「アルプスの少女ハイジ」18禁映画のスイス人監督、同日公開「君たちはどう生きるか」宮崎駿監督にラブコール

R18映画「マッド・ハイジ」の公開を翌日に控えた13日、都内のヒューマントラストシネマ渋谷で前夜祭イベントが行われ、スイスから来日したヨハネス・ハートマン(38)、サンドロ・クロプシュタイン(42)の両監督が登壇した。14日に同日公開される「君たちはどう生きるか」の宮崎駿監督へのリスペクトを口にした。

スイス出身作家ヨハンナ・シュピリによる児童書「アルプスの少女ハイジ」を、1974年に高畑勲と宮崎駿が手がけたテレビアニメ版を通して、幼少時から親しんできたという幼なじみの両監督。そんな名作を〝スイス初のエクスプロイテーション映画(タブー無視の低俗作品)〟として、B級エログロバイオレンス作品に生まれ変わらせた。

独裁国家スイスのアルプスで暮らす24歳のハイジは、情交シーンも描かれるペーターが闇チーズを販売した罪で処刑され、おじいさんまでも当局の手で山小屋ごと爆殺され、女性矯正施設で知り合ったクララと心を通わせながら復讐の炎を燃やす。高畑&宮崎アニメ版、日本の異色映画「殺し屋1」「女囚さそり」「修羅雪姫」にもオマージュを捧げる演出の中、血と恐怖と暴力、お色気シーン、奇想天外な展開が繰り広げられる。

サンドロ監督は「ミーの国は平和で平穏というイメージがあるけれど、その印象を真っ逆さまにして超マッドなスイスをみんなに見てほしかったのさ!」と説明。ヨハネス監督は「スイスの子供たちは日本のアニメを通じて『アルプスの少女ハイジ』を知ることが多い。ただドイツ語の吹き替え版なので子供の頃はドイツやオーストリアのアニメだと思っていたよ」とスイス事情を語った。路上アートでアニメ版ハイジのイラストが描かれるほど浸透しているといい、サンドロ監督も「日本のアニメ、メッチャ好き」と笑顔で呼応した。

同作はテレビアニメ版に携わった宮崎駿監督の10年ぶり新作「君たちはどう生きるか」と同日に公開される。この偶然を受け、サンドロ監督は「宮崎さん、スイス生まれの『アルプスの少女ハイジ』を日本から逆輸入する形でミーたちに紹介してくれてサンキューだよ」としみじみと感謝。ヨハネス監督は「宮崎さんには『マッド・ハイジ』を観てほしいな。新作アニメの成功も心から祈っているよ」とラブコールを送っていた。

資金調達は世界各地のB級映画愛好家たちを意識してクラウドファウンディングで行われ、約2億9000万円が集まった。独裁者マイリを演じたのは「スターシップ・トゥルーパーズ」の主人公ジョニー・リコ役で知られるキャスパー・ヴァン・ディーン。おじいさん役に「グラディエーター」「パイレーツ・オブ・カリビアン」のデヴィッド・スコフィールド。B級を超越した俳優陣でも注目を集めそうだ。

警察官の仕事もしていた脚本家の一人が今作の内容を理由に警察官をクビになり、訴訟の末に大金をゲット。布販売店に衣裳づくりに協力しないように、と呼びかける反対運動が発生。スイスの著名アーミー・ナイフ社から訴訟をチラつかされ、ハイジの武器が日本刀に変更されるなど、制作中のアクシデントも事欠かない。

イベントでは「欧州、米国を経て日本にも来られるなんて」と喜んでいた両監督。同作のシリーズ構想を問われたサンドロ監督は「メニー!メニー!メニー!」と長寿化を予告し、ヨハネス監督が「映画は大体において1作目を上回ることはないと言われるけれど…9作目くらいまでは頑張るぞ!」と「悪魔の毒々モンスター」も真っ青な構想をぶち上げていた。

同作には当初、ハイジのテーマは存在していなかった。スイス初のエクスプロイテーション映画制作を目指す中、スイスならではのテーマとしてチョコレート、チーズ、精密な高級腕時計、アーミー・ナイフ、そしてハイジへと到達したという。

ヨハネス監督はよろず~ニュースの取材に「アニメのハイジは子供の頃から見ていて、ドイツ語吹き替え版だったが、かなり大きくなるまで日本のアニメだとは知らなかった。それくらい日常生活に溶けこんでいた。ハイジを小説ではなく、アニメで初めて知った子供が多くいたと思う」と回想。そして「ヨーロッパではこのアニメが大変有名なので『マッド・ハイジ』にとってアニメ版は大変重要な存在である。というのは、えっ、あのハイジがマッドになったの?とみんなそのギャップに驚いてくれたから」と振り返った。

それだけに、日本への思いも大きい。「アニメがなかったら『マッド・ハイジ』は生まれていないので、自分にとってアニメ版はリスペクトする存在。チャンスがあるなら『マッド・ハイジ』の続編は日本で撮影出来たらと思っている。これは夢だけど」と語っていた。

闇チーズを取引するピーター、映画『マッド・ハイジ』より (C)SWISSPLOITATION FILMS/MADHEIDI.COM
「マッド・ハイジ」イベントに参加した(左から)ヨハネス・ハートマン監督、サンドロ・クロプシュタイン監督、スコット・ペディゴEP
映画『マッド・ハイジ』ポスタービジュアル (C)SWISSPLOITATION FILMS/MADHEIDI.COM

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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