埼玉中小企業家同友会【設立50周年・地域に生きる(12)】武蔵浦和会館・小杉英介代表取締役、寄り添える環境つくる

「葬儀の時だけではなく、日常で困った時にも頼ってもらえる関係を地域の方と築いていきたい」と話す小杉英介社長

 埼玉県内の中小企業経営者らが加盟する埼玉中小企業家同友会(会員約千人)が今秋、設立50周年を迎える。経営を学ぶ「社長の学校」として1974年に設立。コロナ対策に加え、原材料費やエネルギー価格の高騰を受けながら、地域の課題解決をビジネス化し、「ウィズ・コロナ」を見据えた新事業を展開するなど個性的な企業が多く集まる。人を生かし地域に生きる地元企業16社を紹介する。

■武蔵浦和会館(さいたま市)小杉英介代表取締役

 時代と共に葬儀の在り方も変化している。中でも家族・親戚など近親者のみのコンパクトな形で行う「家族葬」は年々需要が増えているという。「葬送空間はるか」を運営する武蔵浦和会館(さいたま市南区)は家族葬を専門に行う葬式場だ。

 「近くに大きな葬儀式場ができ、同じ路線では到底やっていけない」と家族葬専門に形態転換したのが12年前。小杉英介代表取締役(46)はそれから数年後、現職に就任した。思わしくなかった経営状況を上向きに立て直すまでにさまざまな苦労もあったが、その支えとなったのが「地域交流の場でありたい」という理念だったという。身近な人を失った方の支えとなるよう、同社で葬儀を挙げた人や、地域の高齢者同士の交流サロン「つどい場はるか」を運営。お茶会や旅行など定期的にイベントを開催し、会員数は現在1800人を数える。さらに4年前からは「会いに行く葬儀社」として「一般社団法人はるかイキイキくらぶ」を立ち上げた。こちらでは近隣に住む高齢者の「便利屋」として、行政にはできないサポートを独自に行っている。

 コロナ禍で集まりが中断した時期もあったが、かえって「人に会えるのがいかに幸せか分かった」という。「ゆっくり葬れる環境をつくりたい」という社長の思いが反映された式場は、暖色系の照明で統一され、亡くなった人と寄り添えるような時間を最後に過ごすことができる。「地域の一員として、ギスギスしない世の中を率先してつくっていきたい」と語るまなざしには、元々おばあちゃん子だったという小杉さんの優しさがあふれていた。

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