3年生、夏物語2023 野球 プロ注目の右腕・松石信八(藤蔭3年)、9球で終わった最後の夏 【大分県】

第105回全国高校野球選手権大分大会

7月13日 別大興産スタジアム

2回戦

藤 蔭 040 100 000|5

鶴崎工業 003 303 10×|10

今大会の最注目投手の夏は9球で終わった―。最速152キロを誇る藤蔭の松石信八(3年)は、プロ野球のスカウトが注目する逸材だ。シード校として2回戦から登場し、先発マウンドに立った松石は、一回をわずか7球で三者凡退に抑え、二回に先頭打者に2球目を投じた後、左脇腹に痛みが走った。「腹筋に力が入らなかった。これ以上投げるとチームに迷惑をかける」と無念の降板となった。

「試合前から違和感があるとは聞いていた。これまで一度も痛みでマウンドを降りたことがなかったので、相当な痛みだったと思う」と竹下大雅監督。松石のベンチに帰る足取りは重く、顔は険しかった。「キャプテンとして、エースとしてチームを引っ張る立場の自分が迷惑をかけた。情けない、申し訳ない」とうつむいた。

プロ野球のスカウトが注目する松石信八

1年の夏の県大会で146キロを計測し、注目を集めた。投手としての才能は高く、変化球はカットボール、チェンジアップ、カーブ、スプリットと全てがカウント球。今大会の前の練習試合ではブレーキのかかったスライダーがさえ、フォークとともに勝負球となっていた。「この3年間で一番いい状態だった」と手応えを感じずにはいられなかった松石。それだけに不完全燃焼の降板、そしてチームの敗退を受け入れるには気持ちの整理ができなかった。「情けない。涙も出ない」と試合後はぼうぜんとしていた。

ネット裏のスカウト陣が一斉にスピードガンを向けたピッチングの他に、打者としての才能も評価されている。50メートル走5秒9、遠投115メートル。打って、投げて、走れる。トップバッターも、クリーンアップもこなす対応力がある。「自分で打って、自分で抑える」。投打で非凡な才能を発揮するはずだったが、高校野球の幕切れはあっけなかった。今後はプロを目指す。松石は「投手でも野手でも、声がかかればなんでも挑戦したい」と、さらなる高みへ決意を語った。

降板後は仲間のサポートに徹した

(柚野真也)

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