手作り花笠、最後の展示 山形市内「ハナサクヤマガタ」

児童らが作ったオリジナル花笠を展示する東北芸術工科大の学生=山形市・水の町屋七日町御殿堰

 新型コロナウイルス禍で中止や規模が縮小された「山形花笠まつり」の熱気をつなぐため、手作り花笠で夏の山形市中心部を彩ってきたプロジェクト「ハナサクヤマガタ」の最後の展示が14日、山形市の水の町屋七日町御殿堰などで始まった。今夏、祭りは通常開催に戻り、「つなぎ」の役目を終える。当初から関わってきた東北芸術工科大の小島洋非常勤講師は「花笠を踊り手にバトンすることができた」とし、来月5日からの祭り本番に向け「完全復活を盛り上げたい」と話している。

 プロジェクトは新型コロナ感染拡大で山形花笠まつりが中止となった2020年、閑散とした市中心部をなんとかしようと、企画した。当時、密を避けるためにイベント関係はオンライン開催が主流になりつつあったが、小島非常勤講師はリアルにこだわった。ただでさえ、老舗百貨店の閉店でにぎわいが失われていた中心市街地が「このままではどんどん活力が失われてしまう」との危機感があった。

 加えて、祭り中止が長く続けば「花笠の製作技術が途絶えてしまうのではないか」との不安もあった。コロナ禍が収束して再び祭りが開かれる日まで「技術をつなぐ必要がある」。祭りで使う花笠の枠を借り、オリジナルの笠を作り続けた。飾る数は年々増え、350個から700個に増えたが、今年は600個にとどめた。「踊り手が使う本来の姿を優先した」と小島非常勤講師。

 御殿堰には、子どもたちが折り紙やイラストで模様を付けたオリジナル花笠133個を飾った。企画構想学科2年の木村茉由香さん(20)は「先輩から引き継いだイベントも最後。学外と多くつながり、集大成として華やかに実施できた」と満足そうに語った。

 七日町商店街振興組合の岩淵正太郎理事長は家族連れが商店街に足を運ぶきっかけになったと喜び、「街を明るくしてくれ、祭り中止や規模縮小の寂しさが和らいだ」と話した。

 展示は8月19日まで。花笠は市中心商店街の店頭などに飾り、1日から展示する山形市のエスパル山形ではスタンプラリーも実施する。

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