【どうする家康】本能寺の変まで46日、信長の死は家康黒幕説でいくのか?

古沢良太脚本・松本潤主演で、江戸幕府初代将軍・徳川家康の人生を描きだす大河ドラマ『どうする家康』(NHK)。7月9日の第26回『ぶらり富士遊覧』では、ついに滅亡を迎えた武田勝頼への追悼と、同回の最後に家康が告げたまさかの一言で、SNSが大いに盛り上がった(以下、ネタバレあり)

家康の海老すくいを見て喜ぶ織田信長(岡田准一) (C)NHK

■ どうする家康、腹の内を明かす

遠江の高天神城を落としたことで、武田勝頼(眞栄田郷敦)と家康の決着はつこうとしていた。織田信長(岡田准一)と徳川の連合軍が甲斐に攻め入り、家康は穴山梅雪(田辺誠一)の手引で、武田の拠点・躑躅ヶ崎館に入って武田信玄(阿部寛)の面影をそこに見出す。そして信長の嫡男・信忠の手勢によって、勝頼が討ち取られたとの知らせが入った。

勝頼の首と対面した家康は、明智光秀(酒向芳)に蹴るなり踏みつけるなり存分にするよう促されるが、家康は「恨んではおりませぬ。死ねばみな仏」と固辞する。その後、お祝いと称して国を上げて信長をもてなした家康だったが、信長が帰ったあと家臣たちに「信長を殺す。わしは天下を取る」と宣言。それは「本能寺の変」の、46日前の出来事だった・・・。

■ 華々しく散った勝頼、演じきった郷敦

武田信玄が退場した第19回からレギュラー状態で家康を苦しめるという、おそらく歴代大河のなかでも「ダメな跡継ぎ」の汚名を返上する働きぶりをもっとも見せた「どう家」の武田勝頼。

『どうする家康』第26回より、戦場に立つ武田勝頼(眞栄田郷敦)(C)NHK

実際に高天神城の戦いで兵をほぼ皆殺しにされて、「もはや家臣を守る力はない」と一気に勢いを失った勝頼(つまり、ドラマでの家康の無慈悲な判断は正しかったのだ)の引き際が、26回ではたっぷりと描かれた。

その最期は、武田の虎の穴で鍛えられた「信玄がすべてを注いだ至高の逸材」にふさわしく、大勢の敵兵を相手に華々しく散るというもの。SNSでは、「最期まで武田の名を守り抜いた誇り高き志士」「勝頼を戦う姿のまま退場させるの正しすぎる。このドラマの勝頼の退場はこれしかない」など、惜しむ声が並んだ。

『どうする家康』第26回より、武田勝頼(眞栄田郷敦)(C)NHK

また初大河とは思えない風格で、勝頼を演じきった眞栄田郷敦も称賛したSNS。「『風林火山』(2007年)でのお父さん(千葉真一)を思い出す郷敦勝頼の最期」「最後に郷敦さんの見事な殺陣を見られて眼福でございました!」「オーラがあってどこか哀しみを湛えているのが本当に良い。この大河を見ていて良かった俳優さんNo.1」などの声が寄せられた。

■ 本能寺の変、家康黒幕説が一気に浮上

そして勝頼の死以上にショッキングだったのは、家康が最後にまさかの「信長を殺す」宣言をしたことだ。今回は富士遊覧の最中ですら、感情をどこかに置いてしまったような演技が鬼気迫っていた松潤家康だが、それがこの「信長を倒し、天下を取る」という野望を、効果的にむき出しにするためだったとは、驚きとしか言いようがない。

『どうする家康』第26回より、家康(松本潤)の決意を聞く家臣ら (C)NHK

SNSでも「ダークサイドヤッス爆誕!」「白兎と思いきや、とんでもない奴が今年の家康だった」「やっと本心を告げて、ついに光が差した。でもとてつもなく暗い炎。最高」「もはや狸どころか狂気じみてる。この家康なら信長を倒せる気配すらある。ここまで変化させてくるとは想像つかなかった」と、家康の覚醒に歓迎の声が多数上がった。

そしてあの『本能寺の変』において、少数ながらも支持する人がいる「家康黒幕説」の現実味がここに来て一気に浮上。これには、「家康黒幕説行くの? まさか光秀を陥れたりする?」「『家康も殺したかったが光秀に先を越された説』か『光秀の陰謀に気づいたがあえて無視した説』のどちらかだろう」など、さまざまな予想が流れた。

アバン(プロローグ)のアニメにはタヌキが登場したが、まさに「手の内がわからない」とか「平気で相手をだます」など、従来の「タヌキ親父」な家康像に一気に近づいた今回。そして同時に、家康と信長の最後が、少しずつ近づいていることを意識させる幕引きだった。個人的には「ノッブいじらしいやん」と不憫に思ってるところがあるので、2人の心が少しでも通じる展開があってほしいとも思うのだが・・・。

『どうする家康』はNHK総合で日曜・夜8時から、BSプレミアムは夕方6時から、BS4Kは昼12時15分から放送。7月16日の第27回『安土城の決闘』では、信長を討つ決意を固めた家康が、信長から家臣団ともども安土城に誘われ、あらためて対峙する様が描かれる。

文/吉永美和子

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