桑の実食べ、ツツジの蜜吸った…アニメの舞台になった「下里分校」で同級会 91歳の恩師囲みタイムスリップ

恩師の山下勝三先生(中央)を囲み行われた同級会の様子=埼玉県小川町下里の旧下里分校

 今月上旬、埼玉県小川町下里の旧小川小学校下里分校に、1965年3月に巣立った仲間たちが集まった。当時の趣を残す学びやで、恩師を交えた17人は、よもやま話に時のたつのを忘れ旧交を温めた。

 旧下里分校は2003年、児童数の減少で休校、2011年に廃校となった。その後、地元のNPO法人「霜里学校」が管理運営している。校舎は1964年に新築したもので、今も残る。アニメや映画の舞台にもなっている。

 当時は1年生から4年生が分校で学び、同級生は33人もいた。企画したのは、幹事を務めた轟重子さん(68)、安藤秀子さん(68)、田中恵子さん(69)。きっかけは2年から4年の担任を務めた同町在住の山下勝三先生(91)。6月初め「これからも下里分校を大切にしたい。皆にも会いたいね」との思いを知った。

 実は山下先生が分校に赴任した時の校舎は「屋根は草ぼうぼう、床はボロボロだった」という。そこで「これでは満足な教育はできない」と町や議会に働きかけ、新築が決まった。新校舎は4年生の時に完成した。この機会に「先生の90歳と叙勲をお祝いしよう」と幹事3人が急きょ、電話で同級生に呼びかけ、町内外から16人が集まった。

 会場は、当時の音楽・図書室だった多目的室。58年ぶりに入った教室。久し振りに会う同級生だが、みんな同じ顔のまま年を重ねて、一瞬でタイムスリップ。各自が近況のほか「校庭にあったイチョウの木の銀杏を拾って、洗って、売って、記念品の費用に充てた」「桑の実を食べ、ツツジの花の蜜を吸った」「槻川を石でせき止めて泳いだり、魚捕りをした」「自然の中でたくましく育った」「愛宕山で相撲を取った」「新校舎ができる前は公会堂や社務所で分散授業をした」などと、分校生活の思い出を語り、当時に思いをはせていた。

 山下先生は「この校舎(分校)が、少しでも長く愛され、大切にしてもらえたら」との思いで声をかけた。「皆が立派に成長してくれて、うれしい」と話した。轟さんらは校庭の一角に桜の木を植樹した。「先生のおかげで、久し振りに仲間に会えた。今度は春に、桜の咲くころに会いたいね」と再会を誓って、散会した。

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