藤沢文学を軽快な大阪弁で表現 鶴岡・落語家の桂そうばさん独演会

巧みな話芸を披露した桂そうばさん=鶴岡市・荘内神社参集殿

 作家藤沢周平さん(1927~97年)の小説を題材にした独演会「らくごDE藤沢周平」が15日、藤沢さんの出身地・鶴岡市の荘内神社参集殿で開かれた。上方落語家・桂そうばさんが藤沢文学の世界観を鮮やかに表現、笑いと人情味あふれる噺(はなし)で会場を沸かせた。

 桂そうばさんは芸歴18年目。先月20日には上方の落語家が話芸を競う第9回「若手噺家グランプリ」で優勝した実力者だ。3年前に藤沢作品に初めて触れてほれ込み、落語化に取り組んだ。

 高座にかけたのは藤沢さんの短編「遠ざかる声」を原作にした人情噺。亡くなった妻が夢枕に立つなどして再婚を邪魔する物語で、嫉妬心と、夫への愛情のはざまで揺れる亡妻と、時がたってもなお先妻を思う夫、それぞれの胸の内を情感たっぷりに演じた。

 藤沢周平さんの長女・遠藤展子(のぶこ)さんは「大阪弁なので、より軽快で人情味も増した作品に仕上がった」、藤沢周平事務所の遠藤崇寿(ただし)代表は「江戸の舞台をどう表現するのかと思ったが、見事に再現してくれた」と評価した。

 藤沢作品を原作にした鶴岡での独演会は昨年11月に続き2回目。この日は約150人が訪れ、藤沢文学とはひと味違った魅力に触れた。鶴岡市芸術文化協会の東山昭子会長は「昨年は大笑い、今回は笑いの中にしみじみとした部分もあり、とても楽しかった」と話した。

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