「80年生きてきて初めて」孤立集落から避難の住民、膝まで泥 青森県内大雨

時折強く降る雨を窓越しに見る避難者(左)や地区の民生委員=15日午前11時38分、深浦町の大間越地区コミュニティセンター
「不老ふ死温泉」脇の町道を流れる濁流=15日、深浦町舮作(深浦町提供)

 15日の大雨で災害の恐れが高まった青森県深浦町。午前8時過ぎの大雨警報発令とともに、町役場など3カ所で自主避難者受け入れを開始。秋田県境に近い大間越地区の国道101号では土砂が流入して午前11時から全面通行止めとなり、岩崎地区住民の生活圏である秋田県能代市との往来が途絶した。流れ出した土砂で国道沿いの小集落も孤立。膝まで泥に漬かりながら孤立集落から避難した高齢者は「80年生きてきて初めてだ」と話した。

 町は土砂災害の恐れがあるとして15日午前9時44分、大間越地区の112世帯234人に避難指示を出した。地区住民によると、14日夜から強い雨が降っており、15日も断続的に雨脚が強まった。

 避難所の大間越地区コミュニティセンターへ最初に避難してきたのは、釜谷川近くで1人暮らしの無職棟方ゆみ子さん(70)。県外に住む子どもや親戚から電話で避難を勧められ、避難指示発令を伝える放送も耳にしたため、午前11時ごろ車で避難して来た。「昨年の大雨では、あと少しで川があふれそうだった。来週いっぱい雨の予報が続く。川の近くに住んでいるので心配だ」と表情を曇らせた。

 秋田県境に近い板貝地区は、国道の土砂崩れ現場から接続道路に土砂が流入したことで孤立。2家族5人(60~80代の男女)が消防車両に乗って同センターへ避難した。避難時点で、家屋への土砂の流入はなかったが、国道につながる道路は膝元まで土砂がたまり、消防隊員におぶわれて車両が待機する国道まで避難した人もいたという。避難した中村正次さん(80)は「ゆうべから雨が強く降っていた。80年生きてきてこのように避難したのは初めてだ」と話した。

 被災箇所を視察した後、同センターを訪れた吉田満町長は取材に「秋田と往来する重要な道路の国道101号が大雨のたびに通行止めとなる現状は、責任ある立場の人がしっかり考えなければならない問題だと改めて思った。新知事にぜひとも対応していただきたい」と語った。

 町役場では町職員が情報収集や避難住民の受け入れなどに追われた。町によると、15日昼過ぎ、同町舮作の宿泊施設「不老ふ死温泉」脇を流れる黄金崎川の流末部の地下水路から水があふれ施設脇の町道に濁流が流れ込み、町道が削れるなどの被害が出た。この町道は昨年8月の大雨でも同様の被害があり、町が復旧した。

© 株式会社東奥日報社