農福連携、互いに実り 茨城県が橋渡し、実績拡大

サツマイモの苗を植える就労継続支援B型事業所の利用者ら=阿見町内のJTファーム

障害者が農業分野で活躍する「農福連携」が茨城県内で徐々に進んでいる。茨城県共同受発注センター(水戸市)の橋渡しにより、業務受託の成約件数は増加。障害者の自立と農業の担い手確保として双方にメリットとなり、県は体験会を開くなど取り組みを強化している。

■4年で成約3.5倍

サツマイモの枯れた苗を取り除いたら、新たな苗を植え、手押しの機械で除草-。6月上旬、同県阿見町内の畑で、障害のある人たちが根気強く作業に当たっていた。

畑で汗をかくのは、同県稲敷市内の就労継続支援B型事業所「LACC稲敷」の利用者。日本たばこ産業(JT)の「JTファーム」からの業務委託で、農作業を手伝う。連携は2021年4月に開始。労働は1日4時間、週2回程度という。

県機関の県共同受発注センターが両者を取り持った。比較的障害が重く、一般企業での就労が困難な人が利用するB型事業所を主な対象として、地域の仕事と結び付けている。

農業分野の成約件数は右肩上がりで、22年度は前年から7件増の46件。4年間で約3.5倍に拡大した。1件当たりの平均受注額は約79万8千円で4年前の約2.5倍となり、任される仕事量も増えた。

■工賃上昇

県障害福祉課によると、B型事業所の利用者が農業現場で働いた場合、相場は時給500円ほど。

LACC稲敷の運営会社の東政樹常務取締役は「かなり単価は高い。通常の内職は100円に届かない」と説明する。同農場以外での農作業も請け負っており、利用者への1カ月の工賃支払額は、以前は1万円未満だったが、現在は1万7千円前後まで上昇したという。

座り仕事の内職一辺倒は、人によってはストレスがたまる。経済的自立と精神面への影響も踏まえ、「農業に携わるのは良い取り組み」と語る。

企業や農家側にも利点がある。JTファームの草刈太一所長は「(事業所から)週2回必ず来てくれるため、周辺地域で季節雇用やアルバイトなどを確保するのに比べ安定感がある」と強調。互いに補い合う「ウィンウィンの関係」と位置付ける。

■40カ所以上

同課によると、21年度の県内B型事業所の平均月額工賃は1万5201円で全国38位。全国平均より1300円ほど低い。第2次県総合計画は25年度までの達成目標を1万9211円としており、県は工賃引き上げの一手として農福連携に期待を寄せる。

県内のB型事業所はこれまで、同センターを介し、40カ所以上が連携に着手。一方で、県内には400カ所近くの事業所があり、導入を希望しながら実現できないところも多い。障害によって作業内容の調整が求められるほか、同行する職員の確保、広い畑で目配りする難しさなど、課題もある。

県は19年度から同センター内に専任職員を配置し、アドバイスなどを通して連携を促進。事業所がさまざまな課題に対応できるよう、農作業の体験会や既に連携している事業所との意見交換会も行っている。こうした取り組みが受発注に結び付いたケースもある。

同課は「障害のある人が社会の中で生きがいを持って暮らせることが大切。そのためにも事業所の不安を取り除き、農福連携を後押ししたい」とする。

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