中学校のプール学習相次ぎ廃止…その理由は 福井県内、「時代に合わない」…教員の声も

本年度から実技学習がなくなり、役目を終えた鯖江市東陽中学校のプール=福井県鯖江市

 福井県内中学校でプール学習を取りやめる動きが相次いでいる。鯖江市は本年度から、福井市の一部や若狭町は新型コロナウイルス流行を機に2020年度からプール授業をなくし、全校で継続するのは7市町と半数以下。多額の費用がかかる施設改修を避け、教員の働き方改革も見直しの背景にある。学校の夏の"風物詩"が曲がり角を迎えている。

 ■体育館で“水泳”

 「もし海や川で流されたら、慌てずに『浮いて待て』。よし、やってみよう」。6月30日、鯖江市東陽中学校の2年生を対象にした水泳の授業は体育館で行われた。体育教員が手作りのスライドで水難事故を回避するポイントを伝え、命を守る安全な姿勢を生徒に体験させた。

 同市教委によると、鯖江、中央、東陽の市内全3中学校のプールは築40~45年を迎え、試算では3施設の改修費は計約10億円。各校との協議を踏まえ、コスト削減のため昨年度をもってプール廃止を決めた。中学の学習指導要領は水泳場の確保ができない場合、「事故防止の心得」を取り上げればよいと定めており、3校は座学を行う。

 県内では多くの中学校でプールの改修時期を迎えていて、鯖江市のほか、若狭町の全2校や福井市の6校、越前町朝日中学校が20年度以降にプール学習を順次取りやめた。計9市町が全校で廃止、継続しているのは大野、勝山、池田、美浜、小浜、おおい、高浜の7市町と福井市の4校。小学校では「事故防止の学習効果が非常に高い」(市町教委)として全市町がプール学習を続けている。

 ■「時代に合わない」

 公営・民営施設を活用する学校も目立つ。勝山市は19年度から市内3中学校の授業を市営プールに移して実施し、本年度からは指導もインストラクターに委託した。教員の業務負担を軽減し、生徒にとっては専門的な技術指導を受けられる利点もあるという。安全管理のため教員も同行する。

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 こうした動きに対し教員からは賛同する声が聞かれる。県内の体育教員は「プール学習は命に関わるので特に気を張る。早朝の勤務時間外に行う水質管理や施設の安全チェックの負担も小さくない」。別の教員は「水着になるのを嫌がる生徒が増え、日焼けを懸念する保護者もいる。それでもプールに入れ、というのは今の時代に合わないかもしれない」と話した。

 プール学習の規定 学習指導要領では、中学校の水泳の授業は1、2年が必修、3年生が器械運動、陸上、ダンスとの選択。水泳授業は実技を伴わない座学でも可とし、授業時間数の規定もない。小学校も同様に実技を必須とする決まりはない。高校は3学年とも選択制となり、プール学習の実施校は「ごく一部」(県教委)にとどまる。

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