「不満」の対義語は「感謝」…競技生活と病から得た経験、中学生に語る 川口で競泳オリンピアンの星さん

講演後に生徒と写真撮影する競泳元日本代表の星奈津美さん(中央)=11日午後、埼玉県川口市立戸塚西中学校

 埼玉県川口市立戸塚西中学校(功刀幸代校長)で11日、越谷市出身で元競泳日本代表で、ロンドン、リオ五輪銅メダリストの星奈津美さんが「私の中学時代から今日まで」と題し講演した。

 星さんは選手として世界を視野に努力する中で襲われた病気の経験を振り返り「『当たり前』に感謝することが大切」と普段の日常が続くことこそが幸せと強調。「見えないところで支えてくれる人がいることに気づいてほしい」とし、周囲に対し、常に感謝の心を持って接することの大切さを呼び掛けた。

 講演は法務省の「第73回社会を明るくする運動」の一環として、川口地区保護司会(山喜光明会長)の協力で、全校生徒が参加して行われた。

 星さんはまず、1歳半で水泳を始めたことや、小学6年時に県大会に初挑戦し初優勝したこと、その後の中学生全国大会で2年連続4位となり「言われたことだけをやるのではなく、必要だと思うことをプラスアルファで取り入れる」大切さを知ったことなど、選手として成長しつつある頃のエピソードを披露した。

 そして春日部共栄高1年時のインターハイ優勝、その後のバセドー病発症により5カ月間、練習ができず苦しんだ経験を回顧。そうした中で自身と向き合い「家族らの支えで水泳が続けられていたことに初めて気づいた」とし、これまでの自分にとっての「当たり前」の環境が、周囲に感謝すべき、貴重な日常であったことを再認識したという。同時に「不満の対義語は満足ではなく『感謝』」であると気づかされたとも述べた。

 その後の2011年の世界選手権でメダル獲得はならなかったが、自己ベストを更新できたことから、翌年のロンドン五輪へプラス思考で臨めたこと、ロンドン大会は日本代表としてのまとまりを目指す「チームビルディング」に力を入れたことなどを紹介。結びに「見ないところで支えてくれている人がいる。感謝は究極のプラス思考。お互い助け合うことで力は何倍にもなる」と述べ、他への感謝や支え合いの大切さを強調した。

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