来年、開学75周年を迎える広島大学について、第12代学長の 越智光夫 さんにたっぷり語っていただきました。
小林康秀 キャスター
越智学長は、愛媛・今治市出身、1977年に広島大学医学部を卒業して、広島大学医学部の整形外科に入局しました。そして、広島カープのチームドクターも務め、現在、サッカー日本代表の 森保一 監督のひざの治療なども担当したということです。
広島大学 越智光夫 学長
そうですね。森保監督が18歳でマツダの子会社に入ったとき、ひざのけがをされて。わたしが34歳ぐらいだったと思うんですけども、治療にお越しになられて、それからのおつきあいです。
小林康秀 キャスター
なるほど、そのときの手術があったからこそ、その後も現役生活を続けられたんでしょうし、今、日本代表監督につながっているということですね。さらに越智学長は、「自家培養軟骨の開発」の研究成果などが評価され、紫綬褒章を受章。2015年に広島大学学長に就任して、この4月から3期目を務めていらっしゃるわけなんですが、広島大学とはどんな大学なんでしょうか?
広島大学 越智光夫 学長
平和を希求する精神に立脚する日本有数の総合研究大学だというふうに思います。ルーツは1874年(7月1日)の白島学校の開学に始まります。戦前が75年、戦後75年。一番最初のルーツからいいますと、150周年ということになります。
小林康秀 キャスター
ルーツの場所は、RCC(広島市中区基町)にほど近い東白島。実はご近所さんでした。さて、3期目の学長就任の所信表明で国際化、それから大学改革を掲げられているわけなんですけども。まず大学改革では、どんな取り組みをされたんでしょうか?
広島大学 越智光夫 学長
人事の一元化を行いました。どういうことかといいますと、運営費(国からの交付金)がだいたい60億円、この19年、法人化して減ってきているんです。それをどういうふうに手当てしていくか、人件費の問題があります。各学部で人事をやっていると、なかなかうまく使えないということがあって、必要なところに十分、人材を投入するというふうなためには人事の一元化というのが必要だということになります。それをやってきたということです。ちょっとよくわかりにくいかもわかりません。例えば、具体的にお話しますと、哲学の先生が教育学部でお辞めになっても広島大学には総合科学部とか別の学部がたくさんあって、その中に哲学の先生がおられるかもわかりません。そういう先生を、後任を補充するのではなくて、大学全体で考えていきましょうというのが人事の一元化なんです。
それから大学院教育ですね。大学院も11あったものを4つにして、現在、もう1つ大学院の中に研究科ではなくて研究院というのができたので、4つの研究科をまたまたがるような研究院ができました。そういうことで5つにしたわけですけれども、あまり “たこつぼ型” の研究をするのではなくて、幅広い視点を持てる、ふかんできるような視点を持った人材の育成というふうなことを行ってこようということです。
小林康秀 キャスター
そういった中で大学にまつわる数字をまとめてみました。学生数1万5010人、外国人留学生が85か国・1726人、海外拠点も23拠点あって、国際交流協定大学402協定。インパクトランキング、いわゆる社会貢献の取り組みでは3位という成績。TOEICで730点以上が20%以上(21.6%)となかなかない数字だと思うんですが、国際化ですよね、取り組んでいることは?
広島大学 越智光夫 学長
TOEICの730点以上というのが、海外に行っても、海外の大学でもやっていけるレベルということになります。わたし自身が8年前に就任したんですけれども、スーパーグローバルユニバーシティのトップ型というのに、前学長の 浅原利正 先生が採択を受けていたので、そのお金でTOEICを自由に受けられるとか、英会話のための環境を整えていくというようなことができて、すごく上がって、これは日本のトップクラスだろうというふうに思っています。
小林康秀 キャスター
みなさんが学んでいらっしゃる、ほとんどの学部が移転している東広島キャンパス(東広島市)なんですけれども、なかなか入る機会がない方もいるかもしれません。キャンパス内を取材しています。
小林康秀 キャスター
「広島大学の東広島キャンパスにやってきました。ここに来ると、最初に目に入ってくるのが、あの高い建物(約40メートル)ですよね。ボイラー用の煙突なんだそうです。学生さんたちの中では『フェニックスタワー』と呼ばれて親しまれているそうです」
「中に入っていこうとすると、大きな石碑があります。『広島大学』の文字、これは越智学長自らが書かれたそうです。3月にできたばかりのこの石碑が入口で迎えてくれます」
バスなどの待合所…学生たちがデザイン 空調も完備
小林康秀 キャスター
「キャンパスの中に入っていきたいと思います。目の前には広い駐車場がありまして、何台ぐらい停められるでしょう(東広島キャンパス内 約3400台)。かなり広い駐車場ですけれども、手続きをすれば学生もこの駐車場は停められるということなんです」
「経済学部が左側、右側が文学部ということで、その間を通って、まっすぐ行きたいと思うんですけども、本当に広いなって思いますね(250万平方メートル マツダスタジアム49個分)」
中央図書館…平和公園などを手がけた世界的な建築家・丹下健三氏が設計
工学部…1982年、最初に東広島キャンパスに移転。千田キャンパスから移転した被爆門柱も
かえで通り
小林康秀 キャスター
「ここは、一直線のきれいな並木道ですね。『かえで通り』というそうです。秋は紅葉が美しいそうです」
スペイン広場…ローマのスペイン広場がモデル。大学祭やサークルの発表の場。
河村綾奈 キャスター
「懐かしい。ここでお弁当を食べていました、1年生のとき、春に」
ナノデバイス研究所
小林康秀 キャスター
「こちらの施設ですが、『ナノデバイス研究所』と書いてあります。そのすぐ下には、東広島市にあるアメリカ半導体大手のマイクロン社の日本法人の看板も掲げられています。連携をしまして、半導体の研究開発であるとか、人材育成に取り組む施設なんです。それから経産省・文科省からも支援を受けまして、まさに産学官一体で取り組むための場所なんです」
フェニックス国際センター MIRAI CREA
「真新しい建物が見えてきました。2年前にオープンしたばかりという、国際交流の拠点施設『MIRAI CREA』です。1階にはカフェがありまして、食事などを楽しんでいらっしゃる方も海外の方、多くいらっしゃるんです。会議室などもあって、3階よりも上が居住施設になっています。そこには海外からの先生や留学生などが泊まっているということなんですけれども、国際化をうたう広島大学ならではの施設となっています」
広島大学 東広島キャンパス どんなところ
学生たち
総合科学部 3年(広島出身)
「広いので、夜とか星空がきれいなんです。友だちと散歩しに来たりとか…」
総合科学部 3年(和歌山出身)
「広々と心もちょっと開放感のある学生生活を送れているのかなと思います」
総合科学部 2年(長野出身)
「落ち着いて勉強ができるとか、そういうところでいくと、こういう東広島キャンパスみたいな環境はわたしにとっては一番合っていたかなっていうふうに思います」
工学部 3年(広島出身)
「理系の女性の先輩が自分たちに女子生徒限定でオープンキャンパスしてくれて、話を聞いて、すごく親近感を得て絶対、ここに入りたいと思って…」
工学部 3年(広島出身)
「なんか化学も物理も生物もしっかり勉強できて、それに工学部だけど数学も勉強できる」
総合科学部 2年(バングラデシュ出身)
「この大学はたくさんの学部があって、違う学部の授業を受けることができます。それが自分にとって、とてもいいと思います」
総合科学部 2年(兵庫出身)
「国際性が豊かな広島大学というところと、平和学習をすることができる広島っていうところがミックスされたような…」
広島大学 東広島キャンパス 困るところ
工学部 3年(広島出身)
「西条駅からバスが30分かけてこないといけなかったりとか、混んでいたら、それぐらいかかるので、それがちょっとたいへん」
総合科学部 3年(広島出身)
「市内に行きたいなって思ったときに、高速バスが通っているけど、ちょっと便が少なかったりとか…」
工学部 3年(広島出身)
「たまに授業に間に合わないぐらい、ダッシュで走らないといけないっていうときがあるので…」
― 広大だからね
◇ ◇ ◇
青山高治 キャスター
深く河村さんがうなずいています。
河村綾奈 キャスター
そうそう。広すぎて、自転車で構内を移動しますからね。
青山高治 キャスター
全体的にみなさんから広島大学へのラブというのも伝わりました。
河村綾奈 キャスター
はい。一体感のある大学だなと思いました。
広島大学 越智光夫 学長
すごく、みなさん、優等生の対応をされるなというふうに思いました。
小林康秀 キャスター
みなさん1人ひとり、本当にしっかりとお答えいただいたので、広島大学の学生さんはさっと答える能力ってのはすばらしいと思いました。
広島大学 越智光夫 学長
真面目な学生さんが多いと思います。広々した環境で、250ヘクタールあります。東京ドームでいうと53個分、マツダスタジアムの方がちょっと大きいんですけど49個分あって、緑豊かで自然も本当に多い、すばらしいところだと思います。
小林康秀 キャスター
アメリカ・バイデン大統領と越智学長が握手している写真があります。あらためて説明していただきたいんですが。
広島大学 越智光夫 学長
5月19日から21日までG7広島サミットがございました。岸田総理の強いリーダーシップのもと、広島で開催されたときにバイデン大統領がお越しになられて、半導体開発あるいは人材育成でアメリカの大学と日本の大学が一体となって、高度な半導体人材育成をやっていこうということでですね、日本にあるマイクロン社とかが支援をして教育あるいは開発をやっていこうというときに、その後にバイデン大統領と会う機会がありました。握手を交わさせていただきました。
河村綾奈 キャスター
以前、アレルギーの人も食べることができる卵の研究開発もお伝えしたんですけれども、こうした研究についても広島大学が全国をリードしているんですよね。
広島大学 越智光夫 学長
山本卓 先生(広島大学 ゲノム編集イノベーションセンター長)が初代のゲノム編集学会の会長でいらっしゃいまして、広島といえば、ゲノム編集ということになりますので、アレルゲンを取り除くようなゲノム編集を行うことによってアレルギーのない卵、この安全性を今、キユーピーと一緒に 堀内浩幸 教授が確認されているところだというふうに思います。
小林康秀 キャスター
こういった中から新しい大学発のベンチャー企業も生まれているわけですよね。
広島大学 越智光夫 学長
広島大学は、有償のインターンシップでできるだけ早く企業の人と話し合ったり、一緒に研究するということとか、あるいは学生時代にアントレプレナー教育を、起業家精神を十分やっていこうということで今、非常にそういう面に力を入れております。
河村綾奈 キャスター
あと、わたしの出身学部なんですが、この春、法学部が東千田キャンパスに移転をしました。この意図とか意義っていうのは、どういったところにあるんでしょうか?
広島大学 越智光夫 学長
法学部と法科大学院が一体となって法曹人材を育成していくということで、法学部の先生も法務研究科に来て授業をするとか、あるいは弁護士の方とか行政の方って企業がたくさんおられますので、そういう方がたに来ていただいて教えていただくということで非常に便利になったと思いますし。660人が移動したわけですから、非常に街ににぎわいが戻ってきたということになろうかと思います。一方で、東広島は半導体人材、あるいはアリゾナ州立大学に来ていただいて、今、コロナでちょっと人数は少ないんですけど、そういうところを人数を増やして盛り上げていこうということであります。
小林康秀 キャスター
そんな中で来年は節目の年ということになるわけなんですが、最後に今後の取り組みについて、越智学長の思いを聞かせていただきたいんですが、いかがでしょう。
広島大学 越智光夫 学長
一言でお話させていただくとすれば、世界から選ばれ、地域に愛される大学ということになろうかと思います。たくさんの方が、留学生も今、1700人以上来ていますし、今後、増えてくると思うんです。国際化もどんどん進めていきたいというふうに思いますけれども、一方で、東広島市・呉市と「Town & Gown構想」といって、一緒に地域を盛り上げていこうという試みをやっておりますので、ぜひ、その点にも注力したいというふうに思っています。