栃木県立高、質の維持へ統合必至 学級数減で共学化議論も 岐路に立つ高校 とちぎ再編計画①

昨年度に統合・共学化した足利高。来年度には新校舎が完成し、バスケットボールコート4面が入る大型の体育館も整備される=14日午前、足利市本城1丁目

 栃木県教委が第3期県立高校再編前期実行計画案(2024~29年度)を発表した。生徒数の減少や学習ニーズの多様化などに対応するため、職業系専門高校の統合や、中高一貫校、単位制の定時制・通信制高校「フレックスハイスクール」の新設を提示。特例校として存続させていた日光明峰の統合案も盛り込まれた。大規模となった今回の再編計画案。県立高の現状から課題や計画案の狙い、今後の見通しを探る。

 授業前のざわめきの中、教室にはノートを挟み、男女の生徒が話し込む姿があった。

 男女別学だった足利高と足利女子高が統合し、昨春誕生した新・足利高。武藤敬一(むとうけいいち)校長(58)は「2校の良いところが相乗効果となり、活気が生まれた」と目を細める。

 進学面では国公立大合格者が100人となり、3桁の大台に乗った。部活動も運動、文化の両方で成績が向上しているという。

 6年前の第2期県立高校再編計画で行われた統合。背景にあったのは急激に進む少子化だ。そしてその波は、さらに勢いを増している。

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 「教育の質の低下が心配される」。4日、県庁南別館で開かれた記者会見で阿久澤真理(あくさわしんり)教育長が神妙な面持ちで語った。

 配布した資料には県内中学校卒業見込み者数のグラフ。右肩下がりの線は今後12年間で約3割、1万2600人まで減少するとの予測を示していた。

 現状の学校数を維持すれば各校で小規模化が進み、県教委が適正規模に掲げる「1学年4~8学級」を維持できる学校が大幅に減ることになる。この日公表された第3期県立高校再編計画案では、29年度までに統合などによって8校を削減する方針が盛り込まれた。

 「学校が小規模化すると適正な教員数の配置や多様なニーズに応じた教育課程の編成も困難になる」。阿久澤教育長は懸念を述べ、理解を求めた。

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 今回の計画案では職業系高校の統合が優先され、より賛否が割れるとみられる男女共学化は含まれなかった。県教委が15年度に実施したアンケートで「共学校と別学校両方あるのが良い」と答えた割合が中高生で5割以上、保護者で4割以上だったことも要因の一つだ。

 ただ、中学校卒業見込み者数の下げ幅は30年度以降の方が大きく深刻化する。

 現在、真岡、真岡女子、大田原、大田原女子はいずれも1学年5学級。県教委関係者は「これから4学級に減れば、後期計画(30~35年度)では間違いなく統合・共学化の対象になるだろう」と推測する。

 歯止めのかからない少子化の影響で、今後も再編は不可避の状況だ。人工知能(AI)をはじめとするデジタル化の急速な進展などで社会そのものも大きく変化していく中、高校教育はどう在るべきか。今、岐路に立っている。

県内中学校卒業(見込み)者数の推移

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