インターユーロポル、長引くル・マン後の調査に疑問「ワイヤーハーネスで何を操作するというのか」

 WEC世界耐久選手権などに参戦しているインターユーロポル・コンペティションは、ELMSヨーロピアン・ル・マン・シリーズへの参戦と並行して、2024年からIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権への参戦を計画している。

 ポーランドのチームは、現在WECのLMP2クラスに参戦しているが、既報のとおり自動車メーカーのハイパーカーへの相次ぐ参加や、シリーズの最大グリッド数が限られていることなどを理由に、世界選手権では2023年シーズン限りでLMP2クラスが廃止されることとなった。

 チーム代表のサッシャ・ファスベンダーによると、彼らはLMP2とLMP3で参戦しているELMSに残りつつ、北米のIMSAシリーズへ約4年ぶりに復帰する計画を進行中だという。インター・ユーロポルが最後にアメリカでレースをしたのは2020年。当時はプチ・ル・マン(ロード・アトランタ10時間)でのクラス表彰台獲得や、セブリング12時間レースでの4位表彰台といった結果を残している。

 インターユーロポルのLMP2プログラムは、チーム・オーナーであるヴォイチェフ・スミエコウスキーの息子であり、シルバードライバーのヤコブ・スミエコウスキーを中心として継続される予定だが、IMSAウェザーテック・シリーズのレギュレーションに準拠するためにはブロンズドライバーとの契約が必要だ。

 ファスベンダーは「ELMSと、少なくともIMSAの4つの長距離レースに参戦するつもりだ。IMSAもきっと全戦だろう」とSportscar365に語った。

「今は必要不可欠なブロンズドライバーと話し合いをしているところだ。さまざまなブロンズ(ドライバー)と話をしているが、我々はル・マンが終わってから準備を始めたんだ」

「チームとしてはIMSAへ参戦する方向だね。ル・マンで優勝を飾ったクバ(ヤコブ・スミエコウスキーの愛称)にとって、次なる目標はデイトナだ」としつつも、ファスベンダーによればスミエコウスキーの動向次第ではELMSに参戦する可能性もあるという。

「彼がシルバードライバーであり続けるなら、ELMSにも参加することになるだろう。僕らは彼を中心にプログラムを構築している」

「ELMSでは2台のLMP2で戦うことになる。LMP3カテゴリーでも2台のクルマを走らせたいが、今年失った2台目のLMP3のエントリーを取り戻せるとは思っていない」

34号車オレカ07・ギブソン(インターユーロポル・コンペティション) 2023年WEC第4戦ル・マン24時間レース

■アジアン・ル・マンへ参戦の可能性も

 AsLMSアジアン・ル・マン・シリーズは、最新のカレンダーでは12月2~3日にマレーシアのセパン・サーキットで開幕し、2月にはドバイとアブダビで3レースが行われる予定となっている。

 ファスベンダー氏は、AsLMSのセパン・ラウンドと、1月末に開幕するIMSAウェザーテック選手権の一戦デイトナ24時間への参戦を、それぞれ独立した形で運営することは可能だと考えている。

「それは我々がやっているプログラム全体によってどうなるかが決まるね」

「体制はそれなりに整っているんだ。WECですでに似たようなことをやっていて、もうコンテナへの積み込みが完了しているし、モンツァから富士には何も行かない。同様に、アメリカへコンテナをひとつ、セパンにもひとつ送ることができるんだ」

 近年、アメリカ国外からの関心が高まっているIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権を目指すヨーロッパのチームは多く、インターユーロポル・コンペティションもそのなかの1チームだ。

 現在のLMP2グリッドにはアルガルベ・プロ・レーシングやTDSレーシング、ハイクラス・レーシングが名を連ねており、AFコルセも2023年シーズンのミシュラン・エンデュランス・カップに参戦している。さらにユナイテッド・オートスポーツはELMSに加え、2024年からWECで行っていたLMP2プログラムをウェザーテック選手権に切り替えるとアナウンスした。

■ル・マン後の調査結果を待つインターユーロポル

 6月のル・マン24時間でクラス優勝を遂げた直後から2024年シーズンの計画を立て始めたインターユーロポル・コンペティション。彼らの34号車オレカ07・ギブソンは、レース後のチェックで電子制御ユニットを含む部品が回収されたが、それらのほとんどはすでに返却され、モンツァ6時間レースで使用された。

 しかし、FIA国際自動車連盟とACOフランス西部自動車クラブがどのような判断をするかは不明だが、まだワイヤーハーネスは返却されずにいるという。

 チームを率いるファスベンダーはこのことについて、「僕らにとっては、自分たちは『問題ない』とわかっているから心配はしていないよ」と語る。

「ワイヤーハーネスで何が操作できるというのかわからないね。ECUはパワーと燃料を管理するものだからチェックするのはわかるが、調査されているのはただのハーネスだ。何も疑う余地は無いと思うけどね」と彼はチームの潔白に自信を見せた。

 スミエコウスキー、アルベルト・コスタ、ファビオ・シェーラーのトリオからなるインターユーロポルの34号車オレカは、富士とバーレーンの2戦を残してLMP2クラスのランキング2位につけており、首位のチームWRTとは10ポイント差となっている。

 ル・マン後の調査で万が一レース結果に変動があればポイントランキングにも影響を及ぼす可能性は充分にあり、調査の完了と結果の発表が待たれている。

ル・マン24時間レースでトップチェッカーを受けたクルマを引退させため、インターユーロポル・コンペティションはELMS用のシャシーでWEC第5戦モンツァを戦った。輸送上の関係で第6戦富士では、これとはまた別の個体が使用される予定だ。

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