“無敵”なのになぜ廃部? 報徳高の軟式野球部、最後の夏にかける意地「もったいないと思わせたい」

今春の兵庫県高校大会で2連覇を成し遂げ、喜ぶ報徳学園高軟式野球部の選手たち=5月21日、明石トーカロ球場

 高校野球の甲子園大会出場を懸けた熱戦が続く中、「もう一つの甲子園」と呼ばれる全国高校軟式野球選手権の予選にあたる兵庫大会が26日に開幕する。出場11校の中で、注目は報徳学園(兵庫県西宮市)。昨春から県では4大会連続優勝、20連勝中と無敵を誇る。関心を集める理由はもう一つ。それだけ強いのに、今夏を最後に廃部が決まっているからだ。なぜなのか。(初鹿野俊)

### ■硬式野球部の存在感

 「(部が)なくなるなんてもったいない、と思われるぐらい勝ち続けたい」

 5月21日に明石市の明石トーカロ球場で行われた春季兵庫県高校大会決勝。3-0の勝利で2年連続9度目の優勝を決めると、柏原温(はる)主将(17)は力強く宣言した。

 高校野球の主流は硬式。春の選抜大会、夏の選手権大会は季節の風物詩と化し、日本高校野球連盟の5月末時点の調べでは部員数も3818校12万8357人と、軟式の387校7672人をはるかにしのぐ。

 「報徳野球」といえば、やはり硬式野球部の印象が強い。創部は1932(昭和7)年。甲子園出場は春夏共に県内最多で、選抜は2度、選手権は1度頂点に立っている。今春の選抜では準優勝した。

 対して軟式野球部は99年発足。島内士朗監督(37)によると、硬式の厳しい練習に耐えかねて退部する生徒の受け皿として設けられたという。歴史が浅い上に、強烈な硬式の存在。軟式の柏原主将は「『報徳に軟式ってあるの?』って聞かれることもある」と苦笑する。

 柏原主将は報徳学園中で軟式野球部に所属していた。高校で硬式に進む友人もいたが、1学年の部員が40~50人の硬式よりも、十数人で「試合に出られるチャンスが大きい」という軟式を選んだ。練習時間がそれほど長くなく、学業と両立させやすい点も長所に感じている。

### ■無敵状態「過去にないのでは」

 廃部を知ったのは高校1年の5月。硬式や、昨シーズン全国2冠を果たしたラグビー部など他部と共用するグラウンドが狭いことや、教員の働き方改革が理由とされる。自分たちの学年の11人が最後のメンバー。「後輩が入ってこない」「卒業後に帰る場所がない」と落胆したが、1学年上が5人しかおらず、早くから実戦経験を積んだことが好成績につながった。

 2年生で迎えた昨春の県大会で5年ぶりに優勝。夏の兵庫大会も6年ぶりに王座を奪還すると、先輩が引退した後の秋は県大会を17年ぶりに制し、近畿大会でも22年ぶりに王者に輝いた。3年生になった今春の県大会も2連覇を飾り、昨春からの連勝は20に伸びた。県高野連の担当者も「過去にないのでは」とうなるほど無敵の状態だ。

 ただ、最後の県大会は、唯一全国大会につながり、3年生の引退も懸かっているため、相手も高いモチベーションで「打倒報徳」に挑んでくる。最近は苦戦も多く、島内監督は「下級生に刺激されて上級生も伸びる相乗効果がうちにはない」と心配する。

 もちろん、負ける気は毛頭ない。背番号1の勢志(せし)勇人投手(17)は「県で優勝して、全国でも一つずつ勝って終わりたい」と長い夏を見据える。

 兵庫大会は三田市の神姫バスキッピースタジアムで開かれ、決勝は8月3日に行われる。優勝校が出場する全国高校選手権は8月24日に明石トーカロ球場と、姫路市のウインク球場で開幕する。

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