エンブレムのデザイン変更が「大成功だった」9つのチーム

人それぞれ思い入れのあるデザインが存在するユニフォームのエンブレム。

そのデザイン変更に嘆き悲しむケースもあれば、その反対に変更が(結果的ではあっても)良かったと思えるケースもある。

ここでは、デザイン変更が成功だったと思える9つのチームをご紹介しよう。

なお、これはデザインのビフォーアフターに優劣をつけるという趣旨ではないことを予め申し上げておきたい。

アーセナル

2000-02 Nike ホーム ユニフォーム

2002-04 Nike ホーム ユニフォーム

現在のエンブレムは2002-03シーズンから使用を開始。それ以前はクラシックなフォントと大砲マークを描いた細かなデザインだったが、シンプルなスタイルへの変化は商業的な理由だったとされている。関連グッズへのロゴ表示などマーチャンダイジング対策もその理由の一つだったのだろう。

変更に際し、大砲の向きは“初代”と同じ右向きが復活。2年目の03-04シーズンに伝説のリーグ無敗優勝を成し遂げると、新エンブレムへの好感度も一気に上昇したようだ。その後は完全に定着し、今ではアーセナルの代名詞となっている。

フラム

1997-99 adidas ホーム ユニフォーム

2001-02 adidas ホーム ユニフォーム

現在のデザインとは大きく異なり、かつてフラムはイングランドフットボールの標準スタイルともいえる紋章型のデザインを使っていた。シンプルなデザインへの変更はクラブが初のプレミアリーグを戦うタイミングだったのだが、主な理由は商業目的(と権利関係の整理)だったらしい。

変更は実業家で当時の会長モハメド・アルファイド氏の発案と言われている。このエンブレム以降はクラブも90年代のような3部、4部へ落ちることもなくなり、当初はデザインに対してファンの反発があったものの今では成功の象徴となっている。

東京ヴェルディ

2018 Athleta ホーム ユニフォーム

2022 Athleta ホーム ユニフォーム

日本サッカー界のエンブレムデザイン変更で最も大きな衝撃を与えたのは、東京ヴェルディではないだろうか。Jリーグ初年度からのY型は2019年を最後に姿を消し、2020年からはユヴェントス化とも言えるブランドロゴのスタイルへと変貌を遂げている。

これは単なるエンブレムデザインの変更ではなく、クラブ自体をリブランディングした大胆な戦略の一環。ユニフォームにはV型(Vエンブレム)を付けるが、正式なクラブエンブレムは別に存在する。

ユニデザインも一気にスタイリッシュなものとなり、Vエンブレムは洗練されたヴェルディユニの象徴となった。

モンテディオ山形

2019 Penalty アウェイ ユニフォーム

2023 Penalty アウェイ ユニフォーム

2022年から使用するモンテディオ山形のエンブレム変更は、ある意味では東京ヴェルディ以上の衝撃であった。

新デザインを担当したのは山形市出身のデザイナー奥山清行(ケン・オクヤマ)氏。工業デザイン(とくに自動車)の世界でKen Okuyamaといえば、その名を知らぬ者はいない世界的なビッグネームである。あのフェラーリをイタリア人以外で初めてデザインした人物と言えば、その凄さが少しは伝わるかもしれない。

新エンブレムはあくまで旧ロゴをベースとし、残すべき部分を残しながら新たな要素を加えたもの。六角形は雪の結晶をモチーフにしている。クラブ、選手、ファンのそれぞれがストレートに受け入れやすい、理想的なデザイン変更ではないだろうか。

チェルシー

2003-05 Umbro ホーム ユニフォーム

2011-12 adidas ホーム ユニフォーム

チェルシーは過去に何度もエンブレムを変更してきたクラブ。画像左の文字「CFC」にライオンを組み合せた青い旧デザインは2003-05シーズンのみの使用だが、このスタイル自体は色を変えて1986年から使い続けていた。

だがクラブ創設100周年(2005年)が近づくとエンブレム変更の機運が高まり、2005-06シーズンから杖を持ったライオンを描く現在のデザインへと変わる。これは1953年から86年までのデザインをベースとしたものだ。ちなみに05-06シーズンのみ、100周年記念で色・デザインは若干異なる。

現在のエンブレムを付けてからは、プレミアリーグとチャンピオンズリーグをそれぞれ2度制覇している。

ヴェネツィア

2017-18 Nike ホーム ユニフォーム

2022-23 Kappa アウェイ ユニフォーム

かつて名波浩氏もプレーしたイタリアのヴェネツィア。エンブレムデザインの変更が比較的多いクラブだが、一貫しているのが「有翼のライオン」を描いている点。このライオンは古くからヴェネツィアの象徴とされている。

ヴェネツィアは2001-02シーズンからのユニフォームデザインが洗練された“お洒落ユニ”で話題になり、以降もその路線を継続中。

そんなキットデザインに合わせるかのように、2022-23シーズからシンプルでスタイリッシュなV型のエンブレムへ変更となった。これによりユニフォームはさらに優雅なものへと進化を遂げている。

アイルランド

2022 Umbro ホーム ユニフォーム

2023 Castore ホーム ユニフォーム

アイルランド代表はキットサプライヤーがCastoreに変更となったタイミングでエンブレムのデザインを変更。それまでの良くも悪くも独特でモダンなデザインから、一気にレトロスタイルへと変わっている。

FAI(アイルランドサッカー協会)では、数年前からエンブレムデザイン変更の検討が始まっていたという。旧デザインは三つ葉のクローバー(シャムロック)とサッカーボールを未来的なタッチで描いたものだったが、あまり伝統的とはいえない図柄。

一方の新デザインはクラシックな三つ葉ロゴ。このデザインにはファンや選手の意見も取り入れられているようで、シャムロックを描いてほしいという声が多かったようである。

マンチェスター・シティ

2008-09 le coq sportif ホーム ユニフォーム

2022-23 Puma ホーム ユニフォーム

マンチェスター・シティは2016-17シーズンから現在の丸型エンブレムを使用している。このデザインは1960年代から40年弱ほど使っていたデザインに若干手を加えたもので、シティの歴史を振り返れば納得のいくエンブレム変更である。

一方で以前の鷲を描いたデザインも、90年代後半から2000年代を経て11-12シーズンの44年ぶりとなるリーグ優勝を成し遂げた思い出深いエンブレムだ。だがシティがエンブレムに鷲を使ったことはそれまで一度もなく、97年の変更時には伝統的ではないと反発するファンの声も目立ったという。

ジョゼップ・グアルディオラ監督就任のタイミングとも重なるエンブレム変更。その後のシティの獲得したタイトル数を見れば、もはや黄金期を象徴するエンブレムと言えるだろう。

日本

1998 Asics ホーム ユニフォーム

2010 adidas ホーム ユニフォーム

日本代表は2010年にエンブレムのデザインを変更した。この時は色の変更のみであったが、日本が初めてW杯に出場した1998モデルの「黄-赤-黄」から、シンプルな日の丸カラーに戻している。この点は評価する声もあった一方で、98年の記憶が薄れていくと残念がる声も少なくなかった。

旧デザインの黄は太陽の光で、赤はもちろん日の丸を表している。

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現在のエンブレムはJFAブランド再構築の一環で2018年から使われている。基本的に極端なデザイン変更はなされなかった。

2018年ロシアW杯や2022年カタールW杯での熱きプレーに思い出すエンブレムは日の丸カラー。いずれもベスト16の壁は破れなかったが、日本代表の進化とともにあるデザイン変更はここまでは成功と言えるだろう。

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