多様な選択肢の県立高 中高一貫ニーズに対応 学び直し、受け皿も拡充 岐路に立つ高校 とちぎ再編計画③

「総合的な探求の時間」で、研究テーマを発表する佐野高の生徒。グループで意見を交わしながら学びを深める=14日午後、佐野高(画像の一部を加工しています)

 市長を前に、空き家対策から平和教育の在り方まで次々に提言を展開していく。

 3月、佐野市役所を訪れたのは中高一貫校の佐野高・付属中の生徒たち。両校は自ら課題を決め解決策を探る「探究学習」に力を入れ、この日はその発表の場となった。

 「論理的思考や発信力が着実に伸びている」。中條康雄(ちゅうじょうやすお)教頭(51)は教育の成果を誇る。

 高校受験の影響を受けず、6年間の計画的な指導を受けられることが利点の中高一貫校。県内には他に宇都宮東、矢板東の計3校がある。出願倍率は最も高い宇都宮東で3.5倍など、いずれも高い水準を保つ。

 高校再編計画案では人口の多い下都賀地区でのニーズに応えるため、新たに小山高を中高一貫校に改編する方針が盛り込まれた。さらに、これまでは中学、高校で生徒募集を行う「併設型」だったが、宇都宮東と小山は全生徒が6年間の一貫教育を受けられる「中等教育学校」にするとした。

 佐野では1桁だった国公立大の総合型・推薦型入試の合格者が今春32人まで増え、進路にも好影響が出ている。「各地域の進学校に刺激を与えられれば、いい相乗効果が生まれるのでは」。そう推測するのは県内の学習塾大手の担当者だ。

 隣県の茨城では公立中高一貫校は14校に上り、本県の有識者会議などでは一層の増設を求める声も上がっていた。ただ、県教委担当者は「地元中学への影響もあり大幅には増やせない」と慎重姿勢を見せる。

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 「多様な学び」の受け皿として、定時制と通信制を持つ単位制の「フレックス・ハイスクール」の設置も計画案で示された。現在は2005年開校の学悠館高(栃木市)のみだが、県央、県北に新設する。

 学悠館は「やり直しのきく学校」を理念に掲げ、入学者の半数以上が不登校経験者で占める。テニスや素描など「生徒が関心を示す幅広い科目」(同校)をそろえ、中学で不登校だった生徒が皆勤で志望大学に合格するなど、さまざまな巣立ちを支えてきた。

 県央以北の新設は03年度の最初の再編計画で予定されたが、用地確保などができず白紙に。一方、県内中学から県外私立高(定時制・通信制)への進学者は今春、過去最多の907人(5.2%)となり、体制整備の必要性は高まっていた。

 今回は全日制を募集停止する宇都宮清陵と、統合で空く那須拓陽(那須塩原市)の校舎の活用で場所を確保した。宇都宮清陵に近い清原中でPTA会長を務める石川成佳(いしかわしげよし)さん(47)は時代の変化で学校の形態が変わることを受け止め「学びたくても学べない人が教育を受けられる学校になってほしい」と望んでいる。

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