栃木県立高の統合、学科横断で新たな形模索 専門性維持には懸念も 岐路に立つ高校 とちぎ再編計画②

他学科の科目を学ぶ機会を設けている宇都宮白楊高。農業系の学科に所属する生徒らが簿記を学んでいる=13日午前、宇都宮市元今泉8丁目

 未来志向で新しい学びの場をつくる-。栃木県教委は第3期県立高校再編計画案の方針をそう示し、柱として9校の職業系高校を統合する案を打ち出した。

 統合して新設するのが、計4校の「未来共創型専門高校(仮称)」。今後新たな学校の形として目指す方針だが、そのヒントとなるのが宇都宮白楊高だ。

 同校は農業、工業、商業など七つの職業系学科を持つ。もともとは農業教育の伝統校だったが、1991年に他学科の授業を選択できる「総合選択制専門高」の第1号として開校した。

 「専門外を学ぶことは生徒の視野や知識、進路を広げることにつながる」。同校の阿久津晃一(あくつこういち)主幹教諭(52)は利点を挙げ、胸を張る。

 農業経営科3年大槻遼真(おおつきりょうま)さん(18)は実家のトマト農家を継ぐことを見据え、流通経済科の授業で簿記を学ぶ。「農家も自分で売っていく時代。経営面に生かしていきたい」と意欲的に語った。

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 未来共創型専門高校は、同校が取り組む「学科横断的な学習」をさらに進展させる。例えば各学科でグループをつくり、地域課題の解決策を探るなどの構想がある。県教委担当者は「異なった視点に触れることで、生徒の創造性を育むことが狙い」と強調する。

 職業系高校では近年、定員割れが続く学科が目立ってきた。これまでは主に学級を減らして対応してきたが、「統合に踏み切らざるを得ない状況」(担当者)となり、前向きな統合の形を探ってきた。

 計画案では鹿沼南と鹿沼商工の2校、栃木農業と栃木工業、栃木商業の3校、真岡北陵と真岡工業の2校、那須拓陽と那須清峰の2校が対象に盛り込まれた。

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 一方、懸念の声は少なくない。18日に大田原市内で開かれた県市長会。同市の相馬憲一(そうまけんいち)市長は統合に伴い介護分野の学科がなくなる案に対して「定数割れの問題だけではなく、どういう人材が社会に必要なのかを踏まえて進めてほしい」と語気を強めた。

 市内3校の統合案が示された栃木市の大川秀子(おおかわひでこ)市長は「職業系高校は、人材を地域で育てるという大きな役割がある。専門性はしっかり残してほしい」と求める。

 今回の統合案が、各校が誇ってきた専門性や、地域の人材が失われることにつながらないか。課題が突き付けられている。

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