直木賞に長崎・諫早出身の垣根涼介さん 「極楽征夷大将軍」 長崎県関係者の受賞は6年ぶり4人目

記者会見する直木賞に決まった垣根涼介さん=19日午後、東京都千代田区

 第169回芥川賞、直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が19日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、直木賞に諫早市出身の垣根涼介さん(57)の「極楽征夷大将軍」(文芸春秋)が選ばれた。長崎県関係者の直木賞受賞は第36回の穂積驚(みはる)さん、第97回の白石一郎さん=いずれも故人=、第157回の佐藤正午さん(67)に続き6年ぶり4人目。直木賞はほかに永井紗耶子さん(46)の「木挽町(こびきちょう)のあだ討ち」(新潮社)が受賞。芥川賞は市川沙央さん(43)の「ハンチバック」(「文学界」5月号)に決まった。
 垣根さんは県立諫早高、筑波大卒。横浜市在住。旅行代理店勤務の傍ら30歳で小説を書き始め、「午前三時のルースター」で2000年、サントリーミステリー大賞・読者賞をダブル受賞しデビュー。04年「ワイルド・ソウル」で大藪春彦賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞をトリプル受賞。05年「君たちに明日はない」で山本周五郎賞に選ばれた。
 13年の「光秀の定理」以来、歴史小説を手がけ「室町無頼」(16年)、「信長の原理」(18年)で直木賞候補。今回で同賞候補は3回目だった。ほかに「ヒート アイランド」「涅槃(ねはん)」など著書多数。
 受賞作は室町幕府の祖、足利尊氏の半生を、弟直義と側近の高師直の視点から描いた歴史群像劇。やる気も使命感も執着もなく、「極楽殿」と陰口をたたかれた尊氏が、数奇な運命の下で天下取りを果たす経過を軽快な筆致でつづった。選考委員の浅田次郎さんは「大変長い小説だが、一般読者が親しめない足利幕府の成立について、丁寧に小説として表した大変な力作。愚直なくらい真面目な長編」と評価した。
 垣根さんは記者会見で「いろいろな方々の後押し、推薦があって受賞の運びになった。きょうはたまたま僕の日でもあったのかな、という感じです」と喜びをにじませた。
 永井さんの「木挽町のあだ討ち」は江戸時代後期を舞台に芝居小屋の裏手で起きたあだ討ちの真相を巡る群像劇。
 市川さんの「ハンチバック」は難病の女性の欲望や怒りをユーモアを交えて描いた文学界新人賞受賞作。市川さんは先天性の難病で身体に障害がある。
 贈呈式は8月下旬、東京都内で開かれる。賞金は各100万円。

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