社説:若者の大麻汚染 違法薬物の怖さ周知を

 心身に悪影響を及ぼす違法薬物の恐ろしさを、繰り返し伝えていかねばならない。

 大麻を違法に所持するなどしたとして、大麻取締法違反の疑いで、京都市西京区の京都成章高ラグビー部の元部員3人を含む18、19歳の男5人が逮捕された。元部員3人は、高校在学中から吸っていたという。

 東京農業大ボクシング部に所属する19歳の大学生ら2人も、営利目的で乾燥大麻を所持したとして逮捕された。

 10代の間で薬物汚染が広がっている実態が、改めて浮き彫りになった形である。

 京都府警によると、大麻関連で摘発した14~19歳は、昨年1年間で30人と、10年前の4人から7.5倍に増えた。全年代の摘発者数は159人で、うち30歳未満は全体の62%(99人)を占める。

 増加の背景にはSNS(交流サイト)などを通じ、匿名の売買が横行していることや、「海外では大麻が合法化されているから安全」などと、大麻使用を肯定するような情報が拡散されていることがあるとみられている。

 大麻の隠語「野菜」や「ブロッコリー(絵文字)」の投稿があふれ、大麻が混ぜ込まれたクッキーやグミなど、抵抗感が薄まる形態での密売も目立つという。

 使用すれば、幻覚作用や学習能力の低下、記憶障害などをもたらす。依存性も高い。大麻は「ゲートウエードラッグ(入門麻薬)」と言われる。友達からの誘いや興味本位で手を出すと、より強い副作用や依存性の高い薬物へと深みにはまりやすい。

 違法薬物とは別に、いま若者の間で深刻となっているのが、風邪薬など薬局で入手できる市販薬の過剰摂取だ。死亡例も出ている。まずは学校や家庭、地域で正しい情報を徹底して伝えていかなくてはならない。

 京都府警では、企業との共同開発でSNS上の薬物に関連する書き込みを自動検知するシステムを導入し、摘発に力を入れている。一層の対策を進めてほしい。

 薬物依存者への更生支援は、多くの地域で民間の自助グループが主体になっている。公的な支援の強化も検討すべきだろう。

 薬物依存は、家庭や社会から孤立した若者たちに広がりやすいとも指摘されている。学校は夏休みが近い。身近な大人が若者の変化や悩みに気づき、声をかけることが欠かせない。孤立を防ぐ支援にも知恵を絞りたい。

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