県立高の統廃合 少子化の波、揺れる地元 若者の流出加速を懸念 岐路に立つ高校 とちぎ再編計画④

魅力づくりの一環で行われている日光明峰高の「朝活」=13日午前、日光市久次良町

 憤りさえにじむのは、強い危機感の表れだった。「地域の衰退を危惧させるものであり、到底受け入れることはできない」

 県教委が日光市内全3高校を一つに統合する再編計画案を発表した4日、同市の粉川昭一(こなかわしょういち)市長はコメントを出し、強烈な抗議の姿勢を示した。

 同市の人口減少は著しく、とりわけ若い世代は深刻だ。さらに、県土の4分の1を占める同市。粉川市長は「広い日光市に高校が1校となると、若い人の流失はますます加速する」。減り続ける人口に頭を抱える市にとって、再編計画案は痛烈だった。

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 統合が計画されているのは今市と今市工業、そして小規模でも学校の維持が認められてきた「特例校」の日光明峰だ。

 県教委は1学年4学級以上を適正規模と位置づけるが、「他校から遠い」などの地域事情に応じて、小規模でも県内4校を特例校として存続させている。

 同校は2018年度に特例校となり、魅力ある学校づくりを目指して学校運営協議会を発足。ラジオ体操などの「朝活」には近隣の小学生や高齢者ら約100人が参加し、他にも多種多様な活動を展開する。

 民間下宿所の設置、地元プロスポーツチームによる特別授業、eスポーツ部の新設。通学費の負担を軽くしようとバス会社に交渉もした。隔月で発行する「高校だより」には多くの地元企業、近隣住民が協賛し、資金面で支えている。

 取り組みが評価され、今年2月には文部科学大臣表彰も受けた。喜びの余韻も残る中で、同協議会委員の長南哲生(ちょうなんてつお)さん(65)は肩を落とす。「魅力づくりは手段であって、あくまでも目的は高校の存続だった」

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 上都賀地区は県内で最も生徒数の減少が激しく、29ある学級数は12年後に18学級程度にまで減る。現在の7校を維持した場合、1学年の平均学級数は2.6になる見込み。日光明峰は2学級でも生徒募集が認められてきたが、ここ6年、入学者は定員80人に対し40~50人台と苦しい。今市工業も定員割れが続く。

 「学校を減らさなくて済むなら、そうしたかった」。県教委の担当者が苦渋の表情を浮かべ、つぶやく。

 「地元の気持ちもよく理解できる。だが、規模が小さいと十分な教員も配置できなくなる。例えば、生物の先生が化学も物理も教えることになる」。教育の質などを考えれば「何もしないという選択はなかった」。

 地域の存続か、教育環境か。あらがえない少子化の波に、それぞれの未来が揺れる。

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