多様性渦巻くように…「豊岡演劇祭2023」9月14日開幕 プロデューサーに聞く「公式作品の見どころ」

範宙遊泳「バナナの花は食べられる」(撮影・竹内道宏)

 「豊岡演劇祭2023」(9月14~24日)が兵庫県豊岡市を中心に開かれる。今年のテーマは「うずまく、まくあけ」。公式作品は18団体が22プログラムを上演し、公募形式の「フリンジプログラム」には73団体が参加する。演劇祭プロデューサーの松岡大貴さんは「演劇といえば難しく聞こえるかもしれないが、『よしもと新喜劇』や『宝塚歌劇団』、歌舞伎も演劇の一つ。演劇祭では多様性が渦巻くように、難しい作品から子どもでも楽しめる作品を用意した」とPRする。但馬地域でチケットが先行発売される7月25日を前に、公式作品の見どころを松岡さんに聞いた。(丸山桃奈)

■ぱぷりか「柔らかく揺れる」(14~16日・豊岡市民プラザ)

 演劇界の芥川賞ともいわれる「岸田国士戯曲賞」(2021年度)の受賞作品。広島のある家族がアルコール依存、恋人や親子のねじれ、不妊問題などの悩みを抱えながら、ともに暮らす姿を描く。演劇のせりふは標準語が多いが、この作品は広島弁で貫かれる。幅広い世代が楽しめそう。

■コープス×キオ カナダ×日本共同制作作品「むかし、むかし」(19、20日・豊岡市民プラザ)

 日本の民話の鶴と、西洋の童話に登場する狼に焦点を当て、それぞれの世界観を融合させた。子どもも楽しめるが、少し暗めに描いている。カナダの劇団「コープス」との共演で、物語のスパイスとなる得意のひねりが光る。

■範宙遊泳「バナナの花は食べられる」(15~17日・芸術文化観光専門職大学)

 30代、独身、彼女なし、アルコール依存症、マッチングアプリなど現代人のキーワードを題材にストーリーを展開。舞台に投影した文字や写真、影などを使って、現実と虚構の位置をずらすような独自の演出も特徴だ。岸田国士戯曲賞(21年度)も受賞した新進気鋭の劇作家が手がけた。20~30代など若い世代に見てほしい。

■芸術文化観光専門職大学×リヨン国立舞台芸術技術学校「私はかもめ」(22~24日・同大学)

 銀河系の星に散らばった人類が、再び地球を目指すコメディー作品。平田オリザ氏が脚本を手がけ、演出を同技術学校の校長でもあるロアン・グットマン氏が担う。双方の学生の共演が大きな見どころで、日本語とフランス語で上演する。同技術学校の学生は8月中にも豊岡入りする予定で、同大学の出演学生とともに当日に向けて稽古する。

■庄司紗矢香「音楽と言葉の旅『ふるさと』」(16日・豊岡市民会館)

 フランス在住で世界的バイオリニストの庄司紗矢香さんの演奏が、豊岡で聴ける貴重な機会。楽章ごとにせりふがあり、平田オリザ氏が作・演出した。途中休憩を含む約2時間25分の間、音楽と演劇を味わえる。

■CHUNCHEON CITY PUPPET THEATER COMPANY「変身」(24日・豊岡市民会館)

 フランツ・カフカの同名小説を舞台化。韓国・香川市のパペット劇場で定期公演される作品でも知られる。一般的な人形劇のイメージを打ち破るような表現や演出が見どころ。韓国語で上演されるが、日本語の字幕が付き、子どもから大人まで楽しめる。

■Q「弱法師(よろぼし)」(15~17日・城崎国際アートセンター=KIAC)

 6月末からドイツで開かれた世界演劇祭での上演作品。KIACの芸術監督を務める市原佐都子さんの新作だ。ジェンダーやセクシュアルなど「性」について訴えかける。演劇の初心者向けとは言い難いが、「日本から世界に持っていく作品を見てみたい」「考えさせられるような難しい作品が好き」という人にお薦めできる。

■岩下徹×梅津和時 即興セッション「みみをすます(谷川俊太郎同名詩より)」(17日・香住漁港東港上屋、18日・玄武洞公園)

 昨年の演劇祭では5カ所で上演し、好評だった演目。舞台や客席はなく、ダンスと音と観客で紡ぐ即興の演目。チケットは不要で、気軽に見に行ける。昨年見逃した人はぜひ。

■堀川炎「窓の外の結婚式(利賀日本博プログラム)」(22~24日・旧名色スキー場)

 津波によって一人生き残ったある女性の悲しみを描いた作品。東北地方で7月末から開かれる「常磐線舞台芸術祭」の巡回公演でもあり、東日本大震災を考えるきっかけになってほしい。豊岡市日高町の神鍋での野外公演もお薦めポイント。

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