垣根さん直木賞受賞から一夜 「諫早の誇り」と喜び広がる 地元書店や図書館に問い合わせ、予約相次ぐ

直木賞、芥川賞の受賞作のディスプレーに目を留める来店客=諫早市、オックスフォード貝津店

 長崎県諫早市出身の作家、垣根涼介さん(57)の直木賞受賞から一夜明けた20日、同市内の書店や市立図書館は著書を集めた特設コーナーを設置し、お祝いムードを盛り上げた。市民も地元出身者の快挙を喜び、受賞作が完売した書店もあった。
 貝津町の書店「オックスフォード貝津店」には朝から、垣根さんの著書の問い合わせが相次いだ。6月中旬のノミネート発表以降、多めに仕入れて準備をしてきたが、「受賞が明らかになった瞬間、在庫が足りるか心配になった」と同書店を運営する平湯商事課長の平野辰巳さん(57)。「めったにないことなので、これを機に他の作品にも興味を持ってもらえれば」と期待を寄せる。
 同店では入り口横の目立つ場所に特集コーナーを設置。今回の直木賞、芥川賞の受賞3作品を紹介する縦1.1メートル、横2.1メートルの巨大なポスターを制作し、ショーウインドーに飾るなどして、客を出迎えた。日の出町の出口達博さん(73)は「地元出身者が受賞したということを聞き、早速買いに来た。中学2年の孫が歴史にとても興味を持っているので、送ってあげたい」と笑顔で話した。
 同店では午後5時過ぎまでに垣根さんの受賞作20冊は完売した。

特設コーナーの準備に追われる担当者=市立諫早図書館

 垣根さんの全作品を蔵書としてそろえる東小路町の市立諫早図書館でも、受賞が決定した19日夕から特設コーナーの準備に追われた。20日は月1回の整理休館日に当たり、担当者らは受付カウンター前や、ふるさとの文人コーナーなどに著書を並べて展示した。
 同館主任の川原恵子さんは「諫早の誇り。受賞してしかるべきだと思っていたので、ようやくという感じ。垣根さんの作品はジャンルが多岐にわたり、それぞれが面白い。ぜひ全部読んでもらい、好きな一冊を見つけてほしい」。応援に駆けつけた石部邦昭市教育長は「約15年前の講演会で、作家として家族を養うために苦労している話を聞き、真摯(しんし)な姿勢に感動したことを覚えている。努力が実ったと聞き、とてもうれしい」と話した。
 同館では20日午後時点で、受賞作の貸し出し予約が50件を超えた。市内の図書館には計8冊が所蔵されているが、さらに5冊増やして対応する。

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