原爆資料館の更新巡り 加害展示の継続要望 13団体が長崎市に申し入れ

井上館長(左)に申し入れ書を提出した13団体(右側)=長崎原爆資料館

 被爆80年に合わせた長崎原爆資料館の展示更新を予定している長崎市に対し、市民団体「言論の自由と知る権利を守る長崎市民の会」など13団体が20日、日本による過去のアジア侵略など「戦争加害」に関する展示を引き続き残すよう申し入れた。
 同館は1996年の開館時から、原爆投下に至る戦争の経過や現代の核情勢を説明するコーナーを設置。同コーナーの年表を巡り、過去の同館運営審議会会合で保守系団体から「南京占領、大虐殺事件おこる」の表現修正を求める声があった。今回、同コーナーとビデオ上映などをするコーナーを中心に更新する予定。
 13団体のうち、NPO法人岡まさはる記念長崎平和資料館(同市)は日本の戦争加害展示を長年続ける。新海智広副理事長は同館に寄せられた感想として、日本の若者から「過去の事実を知りアジアと友好を深めたい」、中国や韓国、米国の来館者から「感謝」や「意義深い」との声があると紹介。「過去の加害展示は日本人にプラスで国際的意義もある。(日本の被害だけでなく)加害展示をきちんとしなければ原爆の惨禍も世界に発信できず、加害展示は変えてはいけない」と意見を述べた。
 井上琢治館長は「歴史認識についてさまざまな意見がある。専門的検証も含め慎重に検討する」と述べた。一方、同審議会公募委員の選定過程で事務処理ミスがあった問題を受け、13団体が求めた委員の再選定には応じず、継続協議となった。

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