入魂、最上フレンチ 特産アスパラなど地産地消、元協力隊の松田さん料理店開く

フランスなどでの修業を経て、元町地域おこし協力隊の松田清也さんがフランス料理店「TOUTE MA VIE」をオープンした=最上町・簡易宿泊施設おらだずの宿「りんどう」

 最上町出身で、本場のフランス料理の技術を求めて渡仏した元町地域おこし協力隊の松田清也さん(35)=月楯=が帰国し、今春、同町大堀にフランス料理店をオープンさせた。ともに出店を目指していた料理の師匠から病床で「行ってこい」と背中を押されてから5年。夢をかなえた。松田さんは「最上地域に暮らす人々の生活が見える料理を提供し、フランス料理を気兼ねなく味わえる場所にしたい」と語る。

 同町の協力隊員だった松田さんは2016年に宮城県涌谷町でフランス料理店を営む庄子正弘シェフと出会い、感銘を受け弟子入りした。2人で料理店を開く予定だったが、病に倒れた庄子さんの勧めでフランス行きを決意。18年6月、妻唯さんと渡仏し、1年間、料理人修業に励んだ。

 現地では会話ができないことで相手にされない場面もあった。語学学校に通い、味にほれ込んだパリの2店舗で働き、腕を磨いた。労働時間は1日15時間を超えることもあったが、それでも「フランスでの生活は充実しており、楽しかった」と振り返る。

 19年に帰国し、都内の老舗「コート ドール」で勤務後、開業を見据え22年3月に最上町に戻った。店は簡易宿泊施設おらだずの宿「りんどう」内に構えた。店名は仏語で「ぼくたちの暮らし」を意味する「TOUTE MA VIE(トトマビ)」。同年から試験的に開き、今年5月末に本格営業を始めた。

 提供する料理は最上地域の暮らしが見えるよう、地産地消にこだわる。特産のアスパラガスは毎日使い、1食に4本ほど入る徹底ぶりだ。「思った以上に足を運んでくれる」と集客にも手応えを感じている。

 庄子さんへの思いは今なお尽きない。命日に墓参を欠かさず、開業も報告した。「庄子さんなくして自分はない。ようやく一緒にレストランをやっている気分だ」。晴れやかな表情でそう語った。

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