「崖っぷちだ」。小規模特例校となっている黒羽、馬頭、那須3高校の関係者は同じ危機感を抱く。4日公表の高校再編計画案では、いずれの学校も3学級から2学級に減らす方針が示された。
2029年度まで2学級が維持される方向だが、その後は未定。入学者が定員の3分の2を下回り続ければ「統合、募集停止」の対象となる。
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再編案の公表を控えた6月末。大田原市と市議会が相次いで県庁を訪ね、「黒羽高の担う役割と存在は大きい」と存続を求める要望書を提出した。
黒羽は普通科3学級となった20年度以降、定員120人に対し、入学者は110人前後。同市を中心に県北への就職が卒業生のほぼ半数を占め、地域では「貴重な人材の供給源」との認識が強い。
同校では地域が一つになる体育祭の開催や、生徒が地域の魅力をPRする観光冊子の作製など、地域交流を通じた生徒の成長に力を入れ、学校運営に取り組んできた。相撲部など全国的な実績もある。
「統合となったら、通学可能な範囲で地元の子たちを受け入れられるのか」。同窓会長で学校運営協議会の稲野正文(いなのまさぶみ)会長(71)は、その姿を描けずにいる。
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馬頭を巡っても、地域の動揺は大きい。同校は現在、普通科2学級、内陸で全国唯一の水産科1学級がある。普通科は過去3年間の入学者が57~29人と定員80人を割り込み、県教委は1学級とすることを打ち出した。
水産科は休耕田を使い、高級食材である淡水魚「ホンモロコ」の養殖を行ってきた。地元農家らにとって、将来の担い手確保への期待は大きい。ウナギふ化や温泉トラフグ養殖なども産業に貢献。普通科の選択授業「農業と環境」では巨大キャベツを育て、町内学校給食にも提供する。
「地域活性化の大切な柱であり、地域を支える人材育成に必要不可欠」。那珂川町の福島泰夫(ふくしまやすお)町長も存続を求めて県教委に要望書を提出。学校の特色を「唯一無二」だと強調した。
同窓会長大金武夫(おおがねたけお)さん(72)は「若い人がいてくれる、通ってくれる。町民にとって希望の星」と同校の存在意義を口にした。
再編案ではこのほか那須高を普通科、リゾート観光科各1学級にし、益子芳星高を新たに3学級特例校とする内容を盛り込む。各校は地元に愛され、特色づくりに腐心してきた。地元の子を育み、卒業生が地域を支える。関係者はその意義を実感するからこそ、存続を切望している。