【がんばれ!郷土力士】大の里、新十両確実 勝ち越しに「とにかくほっ」

  ●緊張で食事、喉通らず 9月26日、金沢場所「凱旋」 

 大相撲名古屋場所(ドルフィンズアリーナ)14日目の22日、東幕下3枚目の大の里(津幡町出身、二所ノ関部屋)は西十両12枚目の英乃海を寄り切り、4勝3敗で勝ち越した。来場所の十両昇進は確実で、来月26日に金沢市総合体育館で行われる金沢場所(北國新聞社主催)の参加も濃厚となった。3敗して食事も喉を通らなかったという大の里は「とにかくほっとしている。自分の相撲を見つめ直して頑張りたい」と来場所を見据えた。

 表情からも所作からも緊張が伝わるほど、大の里は精神的に追い込まれていた。「ずっと気持ちが悪くて。まさか3勝3敗になるなんて思ってなかった」。アマチュア横綱2連覇など数々のタイトルをひっさげて角界入りしたホープは、「ここで関取昇進を決める」との自信を持って臨んだ名古屋場所だった。

 だが、気付けば星は五分に。負ければ十両昇進の望みが消える7番相撲は、感じたことのない重圧がのしかかったが、立ち合いで体でぶつかると、右をねじ込んでまわしを引き、左も入れて圧力をかけ、力強く寄り切った。

 二所ノ関親方(元横綱稀勢の里)や兄弟子の十両友風から励まされ、「4番勝つ」という強い気持ちだけで土俵に上がった。取組後はようやく表情に明るさが戻り「苦しんだので、すごく精神的に鍛えられた」と苦笑い。まだ名古屋場所が終わった訳ではないが「早く9月場所に向けて稽古を再開したい。情けない相撲を取っていたら勝てない」とはやる気持ちを抑えきれないといった様子だった。

 新十両は26日の番付編成会議で正式に決まる。14日目時点で十両は4、5枠が空く見通しで、大の里は昇進の3、4番手とみられる。石川県出身者では2018年3月春場所の炎鵬(金沢市出身、金沢学院大OB、宮城野部屋)以来の新十両となる。大の里は「いい報告を待ちたい」と笑顔を見せた。

 巡業はけがなどの理由を除き、十両以上の力士が全員参加するため、金沢場所での「凱旋(がいせん)」が決定的となった。

  ●「最後の幕下に」 父・知幸さん

 会場に駆けつけた父知幸さん(47)は「これが最後の幕下にしてほしい」と喜んだ。黒星が続き大の里が「なんで勝てんのや」とぼやいた時には、「甘えがあったんじゃないか」とあえて厳しい言葉で励ました。「あれで目が覚めたんだと思う」と息子の活躍に目を細めた。

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