初の空母「鳳翔」、知られざる戦後 元新聞記者が復員活動の記録を出版

「終わらない戦争」

 敗戦を境に復員船に姿を変えた空母「鳳翔(ほうしょう)」。その知られざる活動を元乗組員に取材した、元新聞記者戸津井康之さん(57)の著書「終わらない戦争」が出版された。

 鳳翔は日本海軍初の航空母艦で1922(大正11)年に建艦。太平洋戦争末期は、広島の呉軍港で訓練艦として運用され、実戦には出ていなかった。45年7月28日の空襲で、榛名などの戦艦が撃沈される中、鳳翔は無傷で、武装撤去などの改修を行うと同年10月より南洋諸島やシンガポール、旧満州(中国東北部)からの引き揚げに当たった。

 鳳翔は、1年足らずの間に計8回の遠洋航海に出て約4万人を輸送。通信員だった故・山本重光さんへのインタビューを基に、出入港時の機雷や洋上の大嵐の恐怖に耐え、極限状態を生き延びた元兵士らの救出に尽くした姿が描かれる。

 山本さんは鳳翔の退役後も、海防艦で復員活動に従事。46年11月に任を解かれると故郷の三重で豆腐店を営み、今年1月に亡くなった。最晩年の証言は、資料の少ない復員活動に関する貴重な記録となっている。

 二見書房刊。1980円。(田中真治)

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