「市民病院の神戸移転は白紙」兵庫・三田市長選初当選の田村氏、再編統合への反発を追い風に

支援者らと喜びを爆発させる田村克也氏(中央)と泉房穂氏(左奥)ら=三田市下井沢(撮影・吉田敦史)

 「市民がトップを変えた。新しい歴史が始まった」。猛暑の中、真っ黒に日焼けしながら叫び続けた無所属新人で元銀行員田村克也氏(57)が勝ちどきを上げた。

 前明石市長の泉房穂氏の応援を受けた。当初は全くの無名だったが、知名度抜群の泉氏と写ったポスターを掲げて駅に立つと、通勤客らが次々とチラシを取ったという。選挙戦中は泉氏が2日間にわたって三田に入り、「明石でできたことは三田でもできる。主人公は市民だ」と声を張り上げた。

 自民、立民、公明、国民の推薦を受けて組織固めに動く現職に対し、政党や団体の支援は受けなかった。選挙を手伝ったのは「応援したい」と自ら集まった市民ら。組織はなくても個人個人が精力的に動き、チラシ1万5千枚を3日間で配ったこともあった。

 最大の争点となった三田市民病院の再編統合問題。新病院が神戸市に建設される計画への有権者の反発は大きかった。田村氏が白紙撤回を掲げる一方、別の候補者は「現在の場所で存続する」と訴えたため現職への批判票が割れたが、最後は田村氏が突き放した。

 ガラス張りの選挙カーで市内を巡り、こまめに車から降りては沿道の市民と握手。「私たちの声を聞いてくれた」と涙した高齢者もいたという。子ども医療費の18歳以下の無償化も訴え、子育て層にも浸透。田村氏は「市民病院は白紙撤回し、市民の声を聞く。元気な三田を取り戻す」と決意を新たにした。(土井秀人)

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