岩佐歩夢「前に同じ戦略のクルマがいなければプライムで行こうと決めていた」/FIA F2第10戦レース2

 7月23日に行われた2023年FIA F2第10戦ブダペストのフィーチャーレース(決勝レース2)。6番手スタートの岩佐歩夢(ダムス/レッドブル&ホンダ育成)は、オプション(ソフト)タイヤを履く上位5台とは異なり、プライム(ミディアム)タイヤでのスタートを選択した。

 ただ、周回を重ねてもオプションタイヤはなかなか性能劣化せず、グリップを保ち続けるというダムスと岩佐の想定外に展開に。そこで岩佐は早めにタイヤ交換を実施し、オプションタイヤでプッシュを続けた結果、4位でチェッカーを受けた。

「4位という結果は、いろいろな状況を考えるといい結果だったと思います」と岩佐は振り返った。

 岩佐はプライムタイヤ最上位の6番手からスタート。一旦はオリバー・ベアマン(プレマ・レーシング/フェラーリ育成)に先行されるもすぐにポジションを取り戻し、オプションタイヤを履くデニス・ハウガー(MPモータースポーツ/レッドブル育成)を従えながら周回を重ねた。

2023年FIA F2第10戦ブダペスト 岩佐歩夢(ダムス/レッドブル&ホンダ育成)

 8周目ごろにはオプションタイヤ勢のタイムが岩佐とほぼ同じまで下がるも、それ以上オプション勢のペースが極端に下がることはなかった。路面温度が40度というコンディションの中、早めにタレるはずのオプションタイヤがその性能を維持し続けた。それはダムスと岩佐の想定外の出来事だった。

「もちろん、自分もチームも求めていた結果ではありませんが、今日のマシンはスプリントレースに比べるとオーバーステアが強く、ペースがよくありませんでした。その状況で、この抜きにくいコースでオーバーテイクしてポジションを上げることもできたし、ポイントを重ねることができたので、自分としてはできる限りのことはしたという感じです」

 なお、スタートタイヤにプライム(ミディアム)を選択したストラテジーについては「前に同じ戦略のクルマがいなければプライム→オプションで行こうと決めていました」と岩佐は明かした。

「6番手からではリスクのある戦略ですが、セーフティカーも出なかったので、結果として戦略は五分五分だったと思います。ただ、今日のオプションの保ちは想定外でした」

「本来路面温度が低いとグレイニング(編註:路面に対して横向きの摩耗により、波のようにトレッドパターン上にできる粒状のささくれ。グリップを低下させる)が出やすいはずですが、今日はまったくゼロの状態で、レース序盤にそれが分かった時点では、『今日のレースはダメかな』と思ったくらいです」

2023年FIA F2第10戦ブダペスト 岩佐歩夢(ダムス/レッドブル&ホンダ育成)

 しかし、そこから20周目という早めのタイミングで岩佐はオプションタイヤに交換すると、岩佐もペースアップ。26周目のターン2でランキング2位につけるテオ・プルシェール(ARTグランプリ/ザウバー育成)をかわし5番手に浮上すると、岩佐はプッシュを続けた。

 さらに、35周目のターン1で先行するアイザック・ハジャル(ハイテック・パルスエイト/レッドブル育成)との車間は広かったものの、ここにチャンスを見出した岩佐はインに飛び込み、ハジャルに対し見応えあるオーバーテイクを決めた。

 これで4番手に浮上するが、この時点で3番手を走るビクトール・マルタンス(ARTグランプリ/アルピーヌ育成)とは14秒のギャップがあり、岩佐の順位浮上はここまでとなった。

2023年FIA F2第10戦ブダペスト 岩佐歩夢(ダムス/レッドブル&ホンダ育成)

「ただ、早めにタイヤをオプションに替えて、プッシュし続けての4位は上出来で、それ以上を狙うパフォーマンスは自分のマシンにはなかったと思います」と岩佐。

「次のスパでは優勝争いができるよう、チームとしっかり準備して臨みたいと思います」

 ハンガロリンクで開催された2レースで岩佐が獲得したポイントは21点となる。なお、ランキングトップのフレデリック・ベスティ(プレマ・レーシング/メルセデス育成)は計18点、ランキング2位のプルシェールは計13点となり、岩佐はハンガリーでは勝利には届かずも、ランキング上位2名とのギャップを縮めることに成功している。ベスティとは21点差、プルシェールとは10点差という状況で、今季は残り4大会8レースとなった。

 2023年のFIA F2、次戦となる第11戦は7月28日〜30日にベルギーのスパ・フランコルシャン・サーキットで開催される。引き続き、岩佐の走りに期待したい。

2023年FIA F2第10戦ブダペスト 岩佐歩夢(ダムス/レッドブル&ホンダ育成)

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