暴走危険運転被害者の会「法の運用を正す」 東京で街頭活動【大分県】 問う 時速194キロ交通死亡事故

通行人にチラシを手渡し、危険運転致死罪の問題を訴える大分市の時速194㌔交通死亡事故の遺族、長文恵さん(左)=22日、東京・上野
猛スピードの車が起こした死亡事故

 大分市の時速194キロ交通死亡事故をきっかけに全国の遺族ら9人で結成した「暴走危険運転被害者の会」は、危険運転致死傷罪が抱える問題を改善するために連帯して行動を起こすことで一致した。常軌を逸した猛スピードで引き起こした重大事故にもかかわらず、同罪が適用されにくい実態を不条理だと強調。「法のずさんな運用を正さなければ同じ苦しみを味わう人はなくならない」との思いを共有する。22日はメンバーが東京都内で街頭活動をした。

 会は猛スピードや赤信号無視、飲酒運転による5件の事故で家族を亡くした遺族7人と弁護士2人が参加した。いずれも大分合同新聞の記事などを通じて接点を持ち、21日に東京都内で初の会合を開いた。

 「捜査機関に任せたら、きちんと裁いてくれると思っていたのに…。被害者が黙っていたら危険運転致死罪が適用されないのならば、おかしい」。共同代表に就いた宇都宮市の佐々木多恵子さん(58)は訴えた。

 夫の一匡(かずただ)さん=当時(63)=は2月、時速160キロを超す乗用車に追突されて亡くなった。宇都宮地検は運転していた男(20)を、危険運転致死罪よりも刑の軽い過失運転致死罪で起訴。佐々木さんは「不注意の事故ではない」と署名活動を展開し、地検に起訴内容の変更を求めている。

 失意から立ち上がったのは、遺族の声を受けて検察が対応を見直した例があると知ったからだ。その一つが大分市の事故だった。

 弟の小柳憲さん=当時(50)=を亡くした共同代表の長(おさ)文恵さん(57)は支援者らと協力し、2万8千人分以上の署名を提出することで危険運転致死罪への訴因変更にこぎつけた。「なぜ遺族が記者会見をし、署名を集めなければいけないのか。法をきちんと使ってほしい」と指摘した。

 会は今後、ほかの遺族にも参加を呼びかける。法務省や国会への要望書提出といった活動に取り組む。

 事務局を担う東京都葛飾区の波多野暁生さん(45)は「仲間ができたことは大きい」と話す。2020年3月、長女耀子(ようこ)さん=当時(11)=が赤信号無視の軽ワゴンにはねられて亡くなった。事故の悪質性を繰り返し訴え、加害者は1年後にようやく危険運転致死傷罪で在宅起訴された。

 津市の大西まゆみさん(63)は、時速146キロの車に衝突されて長男の朗(あきら)さん=当時(31)=を失った。裁判所は加害者に同罪を適用せず、過失運転と判断した。

 「司法には裏切られた思いしかない。この法律をどうにかして変える」と語った。

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 「暴走危険運転被害者の会」は22日、東京・上野などで宇都宮市の佐々木一匡さんが亡くなった交通死亡事故に危険運転致死罪の適用を求める署名活動をした。

 会のメンバー7人を含む支援者ら計16人が参加。おそろいの黄色いTシャツを着て、通行人に危険運転致死罪の問題点を記したチラシを手渡した。

 佐々木さんの妻多恵子さんは「時速160キロ超の猛スピードによる事故を過失として扱われるのは納得できない」と述べた。

 長文恵さんは「194キロも160キロも不注意で出す速度ではない。宇都宮地検は起訴内容を変更するべきだ」と話した。

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