「自分たちらしい結婚式」って何だろう-。今春、神戸で挙式した31歳と30歳の共働きカップルは、披露宴最後の挨拶(あいさつ)は新郎だけでなく2人で担い、新婦が父親から新郎に引き渡される「バージンロード」の演出は見直した。未婚女性を集めて花束を投げる「ブーケトス」も取りやめたという。ジェンダー平等や性的少数者への配慮などから、変化の兆しがある結婚式の今を取材した。(名倉あかり)
新型コロナウイルス禍で延期や中止が相次いだ結婚式。演出の「普通」や「当たり前」を見つめ直したのは、大阪市の会社員の2人だ。世帯主は女性で、料理などの家事は、その日にできる方がするスタイルで生活している。
だからこそ、当人同士が「対等」な結婚式にこだわり、神戸の式場もその思いに寄り添った。
その一つが披露宴最後の挨拶で、2人で並び立ってマイクを握った。新婦のみが両親への手紙を会場で朗読するよくある演出も、感謝の思いをしたためた手紙を事前に両親に渡すことで、それに代えた。
また、新婦が歩く道は、「ウエディングロード」と呼ぶことにし、父親が新婦を新郎へ引き渡すのではなく、新婦が自ら手を差し出し、新郎の手をつかむ演出にしたという。
さらに「結婚は家同士がするもの」という考えは自分たちには合わないと話し合い、「○○家」という表現は「○○様」へ変えた。結婚への考え方は多様であることを背景に、未婚女性に「幸せのおすそ分け」をするような演出も控えた。
参列した友人らは「らしい式になったね」と声をかけてくれた。新郎は「『こういうのありなんや』『これはしなくてもいいんや』と自分たちの式が選択肢の一つになれば」と願う。
ちなみに、結婚式でおなじみの誓いのキスは、「人前では恥ずかしい」との理由から、抱き合う「ハグ」に変更した。
性的少数者の結婚式を「LGBTウエディング」としてPRしている式場もある。神戸市灘区六甲台町の式場「ザ・ヒルサイド神戸」だ。
「法的に籍を入れることができないカップルにとって、結婚式は非常に重要な意味を持つ」と同式場。2016年に挙行した当事者の式では、新郎・新婦の呼び方ではなく、それぞれを名前で呼び、少人数のゲストが2人と同じテーブルに座るアットホームな式になったという。
式を挙げた20代の女性は、インターネットサイトに感想を投稿。「なかなか受け入れてもらえないのではないか、変な目で見られるのではないかと不安があった」と打ち明けつつ、スタッフへの感謝をつづった。女性がうれしかったスタッフの言葉とは、「お二人を特別だとは思いません。結婚式を挙げようとするお客さま皆さまが特別です」というものだったという。
同式場のウエディングマネジャー足立奈穂さん(34)によると近年、打ち合わせや準備を新婦に任せるのではなく、積極的に意見を出す新郎が増加しているという。「両親の希望よりも、2人の意向を重視するカップルが目立つ」とも。
また、「新婦が主役」という従来の風潮ではなく、新郎が両親にジャケットを着せてもらう「ジャケットセレモニー」など、新郎が主役になる新たな演出も増えてきているという。
足立さんは「男性だから、女性だからではなく、2人らしい式になるよう、さまざまなアイデアを提案させてもらえたら」と笑顔で話した。