宇都宮・認知症原因の事故補償 賠償責任無しの支給は県内初 最大2億円、共生社会目指す

宇都宮市役所

 栃木県宇都宮市の佐藤栄一(さとうえいいち)市長は25日の定例記者会見で、認知症の人が事故などを起こした際に、賠償責任の有無に関わらず被害者に賠償金や見舞金を支給する「認知症事故救済事業」を、新たに導入することを明らかにした。市が保険の契約者となり加入料を負担する。市によると、加害者に賠償責任がないケースで、被害者に見舞金を支給するのは県内で初めて。

 佐藤市長は「認知症が原因の事故に対する当事者間の補償を救済し、安心して暮らせる地域共生社会の実現を目指す」と説明した。

 市が保険加入料を負担する対象は、認知症の症状があり外出可能な市民。徘徊(はいかい)や外出した際、ぶつかって物を壊したりけがを負わせるケース、または踏切内に入り電車を止めたケースなどを想定している。死亡やけが、物損などの被害者に最大3千万円の見舞金を支払うほか、賠償責任を負った場合は最大2億円を支給する。

 対象の要件を満たす要介護認定者は申請が不要で、8月上旬に加入者証を送付する。介護サービスを利用していない人も要件を満たしていれば、市への申請で保険加入が可能。8月1日から運用を開始する。加入見込みは約3千人、予算額720万円。

 市高齢福祉課は「市内の認知症の人は年々増えており、行政としても何らかの支援が必要と考えている。この事業を家族の安心につなげたい」としている。

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