敦賀高生、ポーランドへ 平和への思い共有しよう

 【論説】敦賀高の生徒が敦賀市の派遣事業でポーランドとリトアニアを訪問する。ポーランドではロシア侵攻によるウクライナ避難民との交流や、迫害されたユダヤ人らの遺品を展示するアウシュビッツ博物館を見学する。現地の人々の考えを直接感じながら、国際平和への思いをめぐらせてほしい。

 訪問日程は28日から8月8日まで。市として両国に高校生を派遣するのは初めてで、高校生が現地で感じたことを市民全体で共有し、交流発展のきっかけにもしたい。

 敦賀港は1920年代にポーランド孤児、1940年代にユダヤ難民が上陸した日本でただ一つの港だ。ポーランドの孤児は、ロシア革命後の内戦状態だったシベリアで家族を失い過酷な状況にあった。ユダヤ難民はナチスの迫害を逃れ敦賀に上陸した。訪問するのはこうした難民の苦難を紹介する市資料館「人道の港敦賀ムゼウム」でガイド活動に取り組む生徒たちだ。

 ロシアによるウクライナ侵攻でポーランドには一時、1200万人の避難民がいた。今も大勢の人たちが残り滞在が長期化する中で、自立に向けた支援の必要性も指摘されている。

 米澤光治市長と対談したポーランド駐日大使は、自国ポーランドが大勢の避難民を受け入れている背景に占領、分割された歴史があると指摘した。世界地図から消えたこともあると述べた。派遣される高校生には、ポーランドの悲劇も学んだ上で、日本と築いてきた関係性に理解を深めてほしい。

 ポーランドで高校生はアウシュビッツ博物館も訪ねる。ナチス・ドイツによって強制収容所ではユダヤ人ら110万人以上が殺害された。一方、リトアニアでは、命のビザが発給されたリトアニア旧日本領事館の記念館「杉原ハウス」を訪問する。

 高校生は日ごろのガイド活動の中で戦争や差別、平和を考える機会を持ってきた。今回の訪問は、敦賀に逃れた孤児や難民のルーツの地で何が起きたのかを知る貴重な機会となる。

 派遣を前に、京都府舞鶴市の引揚記念館の学生ガイドと平和を考えるワークショップにも取り組んでいる。歴史を学ぶ意義は単に過去を知るだけでなく、今の生活を考えるために必要なことと学んだ。

 ロシアのウクライナ侵攻で世界秩序は大きく崩れた。難民にリンゴを渡すなど、敦賀の人々の温かさをガイド活動で伝えてきた高校生が、二つの国で何を感じるのか。今後のガイド活動に成果がどう生かされるのか楽しみだ。

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