長崎県の水産物輸出が止まる 中国の放射線検査が影響 国内相場下落の可能性も

 中国税関当局による日本からの輸入水産物への放射線検査は、水産県長崎にも影響を及ぼしている。長崎県内の各業者は中国への輸出をストップ。長引けば関連業者の収益や国内市場の相場が下がる可能性があり、関係者は情報収集に追われている。
 県によると、2022年度の本県から海外への水産物輸出量は1万1千トンで、金額ベースでは71億円。このうち1~2割の量が中国向けだが、金額ベースでは3~4割に上る。養殖マグロやブリなど高級魚が多く、収益性が高い。
 中国では今月から日本からの輸入水産物への放射線検査を開始。検査に時間がかかるため、一部の水産物は税関に留め置かれ、鮮度が確保できず、経済損失が広がっている。
 県によると、本県から中国への水産物の留め置きが発生しているという情報は寄せられていない。中国への輸出は流通業者を通すか、養殖業者から商社を経由して出すルートがあるが、中国の対応を受けて止まっている。県内の養殖マグロの生産者は「今月の中国向け出荷はキャンセルになった。今後は国内出荷に切り替える」と話す。
 今後、中国向けだった水産物が国内に流通し始めると、国内の相場が値下がりする可能性もある。出荷選別や配送など関連企業も含め、本県の水産業全体に影響が広がる恐れもある。
 県内のある水産流通業者は、中国税関総署が日本からの水産物輸入規制を示唆した7日ごろから輸出を止めている。「詳しい情報を収集中。覚悟はしていたが、こんなに早く中国が全面的な検査に踏み切るとは…」と言葉少なだった。

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