阿部一二三「小学生の頃は勝てなくて。泣いたことしか覚えてない」 悔しさと猛稽古で潜在能力解き放った柔道少年が成長、五輪V2に挑む

パリ五輪で日本の顔として柔道2連覇に挑む阿部一二三=6月10日、姫路市の兵庫県立武道館

 2024年7月26日に開幕するパリ五輪まで1年。柔道など一部の競技ではすでに日本代表に内定した選手もおり、大舞台への切符を懸けて熱き戦いが続く。神戸市兵庫区出身で柔道男子66キロ級の阿部一二三(25)=パーク24=も、五輪内定を勝ち取った一人だ。

 泣き虫だった少年が、パリ五輪で柔道2連覇の偉業に挑む。

 6歳で畳に上がり、地元の兵庫少年こだま会で腕を磨いたが、女の子に負けるほど弱かった。「小学生の頃は大会で勝てなくて。泣いたことしか覚えてない」

 だが、涙に宿らせた悔しさと猛稽古で潜在能力を解き放つ。神戸生田中時代に全国中学校体育大会を2連覇すると、神港学園高では世代を飛び越え、日本一を争う講道館杯全日本体重別選手権で最年少優勝を飾った。

 日本代表になると、4歳上の丸山城志郎(ミキハウス)が宿敵になった。2021年の東京五輪を巡っては、24分に及ぶ直接対決を制して初出場。妹の詩(23)=パーク24、夙川高出身=とともに金メダルに輝いた。

 パリ五輪代表も、丸山との争いに終止符を打って決めた。5月の世界選手権決勝で対戦し、終始主導権を握って完勝。前回の東京大会は最後の出場決定だったが、今回は1年前の6月に男子でただ一人、最速で内定。紛れもなくお家芸の顔になった。

 豪快な背負い投げで知られる。「意識しているのは引き手。相手が前のめりになるぐらいに高く大きく」。敵の懐に滑り込み、自分の背中を当てる。ここまで一瞬。その勢いで回せば、相手は何もできない。世界に誇る必殺技だ。(有島弘記)

【あべ・ひふみ】(1997年8月9日生まれ) 神戸市兵庫区出身。神戸生田中-神港学園高-日体大 【好きな言葉】努力は天才を超える 【嫌いな食べ物】子どもの頃は生魚 【息抜き】海や山へ、自然が好き 【やってみたい仕事】ない。柔道しかない 【試合前の験担ぎ】赤いスパッツをはく

© 株式会社神戸新聞社