乳がんは数十年かけて発症 京都大などチーム、メカニズム解明 思春期から遺伝子に変異

京都大学

 40~50代の女性に発症が多い乳がんの発がんメカニズムをゲノム解析によって明らかにしたと京都大などの研究チームが発表した。思春期前後に乳腺の細胞に遺伝子変異が起こり、数十年かけて増殖を繰り返して発症に至っていたという。英科学誌ネイチャーに27日に掲載される。

 乳がんは日本の女性が最も多く発症するがんで、患者数は増加傾向にある。今回、京大医学研究科の小川誠司教授らの研究チームは、発症までに生じた遺伝子変異の種類と順番をゲノム解析で特定し、経過をたどった。

 同じ染色体異常が認められる乳がん患者4人について、手術で切除された乳腺組織から採取したがんとその周囲の正常な上皮を調べたところ、最初に変異が生じた時期は平均10.6歳(5.8~16.9歳)で、いずれも発症の数十年前だった。思春期前後から始まる成長期で細胞分裂が盛んになり、その中でがんの起源となる遺伝子変異も生まれたと考えられるという。

 4人の染色体異常は乳がん全体の2割を占めるタイプで、今後は同じ検証手法で他の乳がんの解明も試みる。

 女性ホルモンのエストロゲンの分泌量の増加が発がんリスクを高めているとの見方を裏付ける結果も得られた。閉経後は、遺伝子変異が蓄積する速度が3分の1まで低下していた。

 小川教授は「乳がんのメカニズム解明がさらに進めば、将来的には発症前にリスクの高さを把握できる検査手法の開発も期待できる。早期発見、早期治療に貢献していきたい」と話している。

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