【インド】GST補償税、SUV関連で定義調整へ[経済]

インドの物品・サービス税(GST)評議会は、今月開催した第50回会合で、自動車にかかるGSTの補償税(CESS)の定義を調整することを決めた。22%と最も税率が高いカテゴリーの定義から、「スポーツタイプ多目的車(SUV)」の文言をなくすことで、定義を明確化する。

乗用車には現在、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)を除き28%のGSTがかかっている。GSTに加算して課せられるCESSの税率は、カテゴリーによって大きく異なる。

政府は、CESS税率が最も高い22%のカテゴリーの定義を▽全長4メートル超▽排気量1500cc超▽地上最低高170ミリメートル以上▽SUVとして広く知られていること——としてきた。インド自動車工業会(SIAM)の関係者によると、今回の会合では、「どのような名称のユーティリティー・ビークル(UV)あっても、全長4メートル超、排気量1500cc超、地上最低高170ミリメートル以上」を満たしていれば22%のCESS税率の対象にすることが決まった。SUVの文言を無くすことで、MPVやMUVと呼ばれる多目的車の場合はどうなるのかといった曖昧さがなくなり、定義が明確化されたとの認識だ。

インドの税制に詳しいAsiaWise会計事務所の税理士、高野一弘氏は、「今回の定義明確化で22%のCESS税率に適用される車が増えるのではないか」と指摘する。現在、全長4メートル超かつ排気量1500cc超に該当する大型車のCESS税率は20%となっており、このカテゴリーに分類されているUVが、地上最低高170ミリメートル以上であれば、税率が22%に上がる可能性がありそうだ。

各メーカーが販売しているモデルへの影響は明確になっていない。トヨタ自動車のインド子会社トヨタ・キルロスカ・モーター(TKM)でバイス・プレジデント兼最高コンプライアンス責任者を務めるスワプネシュ・マル氏は、「詳細が判明する政府の通知を待ってから影響を評価する。現時点でこれ以上のコメントは差し控えたい」とのコメントを寄せた。

GSTのCESSは、17年7月のGST導入に伴い、税収が減る州政府に対する補償として同年同月に導入された。自動車やたばこといったぜいたく品を対象に、GSTに加えて課税する。当初の導入期間は5年間で、22年6月末に終了する予定だったが、新型コロナウイルス禍での歳入不足を理由に26年3月まで延長された。

乗用車に関しては、最大で50%(GST28%とCESS22%の合計)もの間接税が課されている。AsiaWiseの高野氏は「CESSが常態化している。できるだけ早く通常の状態に戻す必要があるのでないか」と指摘した。

■オンラインゲーム、一律28%

GST評議会は財務相が議長を務め、税率や課税の対象範囲を見直している。第50回会合では、カジノ、競馬、オンラインゲームに一律で28%のGSTを課すことも決まった。高野氏によると、ギャンブルなどの賭け事は一般的に最高GST税率の28%が課されている。一方でオンラインゲームは、ギャンブル性が高いか、操作性などが重視されるかで二つのカテゴリーに分類され、前者には28%、後者には18%の税率が適用されるのが一般的だった。

オンラインゲームを賭博行為とひとくくりにすることに対しては、ゲーム業界から反発が出ている。全インドゲーミング連盟(AIGF)のローランド・ランダース最高経営責任者(CEO)はPTI通信の取材で、「この決定はインドのゲーム業界全体を壊滅の危機にさらし、雇用喪失にもつながる」と警戒感を示している。

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