デジタル+新聞配達 高齢者を見守り 能美市と北國新聞社が新サービス 共同運用へ包括協定

協定締結のため本社を訪れ、砂塚社長と懇談する井出市長(奥)=北國新聞社

  ●来年度にも

 能美市と北國新聞社は26日、デジタル新聞を活用し、市内の高齢者らを見守る仕組みを共同で開発、運用することで合意した。本社が読者向けに提供を予定する「北國新聞アプリ」と、きめ細かな販売店のネットワークを組み合わせ、対象者の安否を連携して確認する。井出敏朗市長は「新聞を読むという日常の習慣を通して家族の見守りができる優しい取り組み。広がりに期待したい」と語った。

 26日、井出市長が北國新聞社を訪れ、砂塚隆広社長と包括連携の協定書に署名した。地域の見守り活動のほか、市の広報力向上や、新聞を活用した学校教育、持続可能な開発目標(SDGs)の後押しなど6項目で協力する。

 デジタルでの見守りは、高齢者がタブレットやスマートフォンでアプリ版の北國新聞を読むと、家族などに新聞を読んだことが通知される仕組み。登録した世帯のアプリが一定期間、起動しなかったり、新聞配達中に異変を見つけたりした場合、市にも情報が伝わり、関係者が自宅を訪問して安否を確認する。

 事業は、市が国の補助を受けて進める「スマートインクルーシブシティ(誰も取り残さない社会)構想」の一環で、来年度以降の本格運用を目指す。本社と販売店はこれまでも新聞を届ける業務を通じて地域の見守りを自発的に行ってきたが、協定を機に行政と情報を共有する。

 能美市の計画では、高齢者らの見守りは北國新聞のアプリのほか、腕時計型端末(スマートウオッチ)やインターネットとつながったIoT家電でも提供する。

 スマートウオッチでは、利用者の心拍数や体温といった健康データを把握し、体調不良や熱中症などの異変を察知。このほか、室内の温度や湿度などを家電で感知し、在宅者の健康状態を確認するシステムも開発する予定だ。

 市は、最先端のデジタル機器と、新聞を届ける配達員の「気付き」の両面で、市内で一人暮らしなどをする高齢者らの暮らしをサポートしたい考え。井出市長は「カメラで常時チェックする監視のような見守りでなく、新聞を読むという生活習慣を通した緩やかな見守りで、高齢者も、離れて暮らす家族も安心できる環境を整えたい」と語った。

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