高校野球 苦しみも悲しみも乗り越えた明豊が3年連続9度目の優勝 【大分県】

第105回全国高校野球選手権大分大会

7月26日 別大興産スタジアム

決勝

大分商業 000 000 000|0

明 豊 030 000 00×|3

「新チームになって『苦しいこと』も『つらいこと』もあったが、最後に報われて良かった」。大会史上初となる3連覇で9度目の夏の甲子園の出場を手にした明豊のキャプテン・西村元希(3年)は勝利インタビューで涙をこぼし、喜びをかみしめた。

大分商業との決勝戦は、明豊が2回無死満塁の場面で、高橋佑弥(3年)の左前適時打などで3点を先制した。その後は継投した相手投手に手を焼き追加点を奪えなかった。それでもエース右腕の中山敬斗(同)が二塁を踏ませず、2安打で完封。川崎絢平監督が「(中山は)完璧に近い内容だった。何も言うことはない、100点満点」と絶賛する投球で、相手に隙を与えなかった。

終わってみれば第1シードとして着実に勝ち上がり、常勝チームの力強さを見せつけた結果となったが、ここまでの道は平たんではなかった。西村が言う「苦しいこと」とは、今年4月の九州地区予選で大分舞鶴に敗れ、2020年秋から続く県内無敗が途切れたこと。さらに5月の県選手権では大分商業に敗れ、2大会連続で優勝できなかった。「今考えれば、春に負けたことを力に変えた。素直に自分たちの実力を受け入れ、悔しい思いを忘れずに練習してきた」(川崎監督)。準決勝の大分舞鶴、決勝の大分商業は、組み合わせが決まったときから「リベンジマッチ」と銘打ち、「負けた相手に勝ってこそ甲子園がある」と乗り越えた。

先制点となる左前適時打を放った高橋佑弥

つらかったのは、昨年8月の練習試合中に当時2年生だった捕手の吉川孝成が、ファールボールを鎖骨付近に受けて、その3カ月後に帰らぬ人となったことだ。現実を受けとめるまで時間はかかったが、「チーム全員で野球ができることに感謝しながら、孝成と一緒に戦っているんだという思いでプレーしてきた」(西村)。今大会では、「孝成と一緒に甲子園に行く」を合言葉にチームが一つになった。中山は帽子のつばに「孝成と共に」と書き、ピンチの場面の度にその言葉を見て、気持ちを奮い立たせたという。

甲子園では苦しみも悲しみも乗り越えた力を集結する。チームには野球ができる喜び、挑戦できる喜びが満ちている。西村は「孝成と甲子園で一緒に戦える。僕らには勝ち続けなければいけない理由がある」とチームの思いを代弁した。亡き仲間のために甲子園で大暴れするつもりだ。

3年連続9度目の優勝を果たした明豊

(柚野真也)

© オー!エス! OITA SPORTS