流れ引き戻した王者・社の冷静さ サヨナラ決勝打の藤井、前打席の反省生かす 高校野球兵庫大会決勝

社-明石商 9回裏社2死満塁、藤井がサヨナラの中前適時打を放つ(撮影・中西幸大)

■社5ー4明石商

 これ以上ない結末に、喜びが爆発した。社が劇的なサヨナラ勝ちで再び頂点に駆け上がった。ただ、秋も春も県3位止まりだった現チームにとっては初の優勝。「みんなでやりたかった」(山本)と、「1」を指でつくったナインの輪がいつまでも揺れた。

 土壇場の攻防こそが王者の真骨頂だ。九回、同点とされ、さらに1死満塁。息を吹き返した相手の押せ押せムードの中、一ゴロを水谷が平然とさばき、併殺に打ち取る。

 「みんな冷静だった」と振り返る藤井がヒーローになったのは裏の攻撃。2死満塁で出番が回り、七回の三ゴロを思い返しながら「無理に引っ張らない」と相手エース自慢のカットボールを中前へ。「抜けた瞬間、鳥肌が立った」。緊迫した状況下で反省を生かし、好機をものにした。

 昨夏に初優勝した先輩が引退後、秋の近畿大会で8強入りし、選抜大会に出場。だが初戦敗退と振るわず、春季県大会も決勝に進めなかった。大型連休後、山本監督は「新チームのつもりで」と選手たちに基本的なプレーの確認を求めた。指揮官の「何度も足元を見る」との意図通り、隙がなく、完成度の高い野球で勝ち抜いた。

 チームの合言葉は「笑頂(しょうちょう)」。頂点に立ち、笑い合う目標は達成したが、隈主将は別のテーマも掲げる。選抜大会では校名に「やしろ」のルビが振られ、全国での知名度不足を痛感。「社が兵庫野球の象徴となれば、もっと知られる」。名をとどろかせるためには、聖地でも大暴れするしかない。(初鹿野俊)

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