夏のイベントへの誘い~山形県大蔵村~

冬の豪雪で有名に・・・

大蔵村は山形県の北部、最上地方。村の南部を月山、葉山、それに連なる山々に囲まれた村です。人口約2,900人の小さな村。そして、ここ数年は「肘折」の名前がニュースで流れる、雪深い豪雪地です。

しかし、春になると豊富な雪解け水が山々や田畑を潤します。そして、自然の恵みをたっぷりと受けて実る山菜や農作物は、大蔵村の自慢です。

村内には、日本の棚田百選に選ばれている四ヶ村の棚田。また、昔ながらの湯治場、広く人々を癒し愛されている歴史を誇る肘折温泉郷。この日本の原風景ともいうべき景観や環境、歴史に裏打ちされた伝統や文化を、村民は大切にしています。

そして、「日本で最も美しい村」を宣言し、自信と誇りを持って日々の暮らしを営んでいます。

開湯1200年を越える「肘折温泉」

肘折温泉・そぞろ歩きする町

肘折温泉の発見は今から約1200年前、807年(大同2年)平城天皇の時代とされます。第100代後小松天皇の御代1391年(明徳2年)正月二日に、初めて温泉場として開業しました。 発見にまつわる伝説も興味深く「昔、豊後国(大分県)からきた源翁という老人が山中で道に迷い途方にくれていたところ、後光きらめく老僧に出会った」というような縁起書が記されています。

この老僧こそが地蔵権現でした。

老僧は、かつて肘を折って苦しんでいた。しかし、この湯につかったところたちまち傷が治った。そのため、源翁に「世上にこの湯の効能を伝えるべく」と言い渡した。その後、近郷の農山村の人々が農作業の疲れを癒す温泉場。また、骨折や傷に有効な湯治場としてにぎわうようになりました。

老僧が住んでいた洞窟は「地蔵倉」と呼ばれるようになり、今では、縁結びの神として参詣が絶えません。

町中を灯籠が彩る「ひじおりの灯」

肘折温泉では17年前から「灯篭絵展示会、ひじおりの灯」が開催しています。

町中を彩る「ひじおりの灯」

今年も山形に縁のある若手作家らが温泉街に逗留し燈籠に仕立てます。周辺に広がる自然や豊かな食文化、山岳信仰や湯治文化など、肘折に息づく様々な情景や物語を描いたものです。作家それぞれの眼差しや語りを通して描かれてきた灯籠絵です。

夏から秋にかけ旅館や商店の軒先にその小さなあかりが灯されます。それは、いつからか肘折の人々にとって「ここに居る」ことを伝えることでもあります。

夏期点灯は旧作灯籠を展示、2023年 7月15日(土)〜 8月27日(日)
秋期点灯は新作灯籠を展示、2023年 9月15日(金)〜10月15日(日)

点灯時間は18:00〜20:30です。

灯りが織りなす「棚田ほたる火コンサート」

そして、8月第1土曜日に四ヶ村の棚田で「四ヶ村棚田ほたる火コンサート」が開催されます。今年は、20回目の節目を迎えます。四ヶ村とは村内の平林・沼の台・滝ノ沢・豊牧の4地区の総称。四ヶ村の棚田は農林水産省の「日本の棚田百選」に1999年に認定されています。

また、ほたる火コンサートや棚田ブランディング、棚田米オーナーの農業体験、畦畔管理軽減のためのラジコン草刈り機の導入など、生業としての棚田の取り組みが評価されました。その結果、2020年に「つなぐ棚田遺産」に認定されました。

四ヶ村の「棚田ほたる火まつり」

2004年まで「棚田ほたる火まつり」が開催されていました。約600個のペットボタル(ロウソクを入れたペットボトル)に村民総出で棚田の畦に灯す幻想的な光のイベントです。

年を増すごとに成長し、ほたる火コンサートして発展しました。肘折山伏が祈祷した松明の灯を運び、かがり火に点灯、この火を子供たちが棚田の1200個のペットボタルに点灯していくのです。

はじまりは、手作り感満載のコンサート

手作り感満載の「ほたる火コンサート」

ピアニスト・小林真人さんを中心に、オカリナ奏者・大沢聡さんらがゲストで参加。「ミスターサマータイム」のヒット曲を持つサーカス・叶高さんなど、これまで、さまざまなアーティストが参加されています。3年前よりオカリナ奏者の第一人者・宗次郎さんが出演されています。

地元の大蔵中学校生徒もゲストアーティストと一緒に演奏します。1000名以上の来場者が、この幻想的なほたる火にとけこみます。そして、オカリナやピアノの音色が棚田一帯に響き渡り、盛り上がりを見せてくれます。

今年は、8月5日(土)17時15分に開催されます。入場料無料で、幻想的な空間を体感できます。

ひじおりの灯」「ほたる火コンサート」「長い歴史の肘折の湯」と、まだ、間に合います。

夏のイベントへ、是非、大蔵村へお越しくださいませ!

寄稿者 小林孝一(こばやし・こういち) 大蔵村 観光プロデューサー

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