星稜、2年萩原が決勝打 有言実行の甲子園切符

八回にセンターへ勝ち越し打を放った星稜の萩原=金沢市の県立野球場

  ●高校野球選手権石川大会決勝

 第105回全国高校野球選手権石川大会最終日(27日・金沢市の県立野球場)甲子園切符を懸けた星稜と遊学館の頂上決戦は、六回を終えて5-5と両者譲らず。「次の1点」が鍵となる終盤の八回、勝ち越し打を放ったのは星稜の2番・萩原獅士(2年)。「決めてやる、と強い気持ちで打席に入った。甲子園に行きたい一心でした」。思いをバットに込めた。

 打席に入る前、萩原の元へエースの武内涼太(3年)が駆け寄った。「お前が決めるんだろ。やってこい」。寮で隣の部屋に住む気心知れた先輩の言葉に気合が入った。2球目の外角直球をしぶとくセンター前へ。萩颯太が勝ち越しのホームを踏むと、満員のスタンドが沸き返った。

 今月上旬、山下智将監督から背番号5を渡された萩原は「俺が甲子園を決めます」と仲間の前で堂々と宣言していた。三回は失点につながるエラーを記録したが、4打数2安打と打撃で貢献した。

 山下監督は「気持ちの強さはチーム1。あの言葉通り、甲子園に連れてってくれた」と笑顔だった。

  ●中山、佐宗が好投 不調武内をカバー

 ○…星稜のエース武内涼太は5-3とリードした五回に1死一、二塁のピンチを招いた場面で降板。4四球、2暴投と荒れた内容に「自己評価10点です」と反省し、佐宗翼-中山敦の両左腕には「尻拭いしてもらった」と感謝した。

 最速149キロを誇るプロ注目の武内は今大会13回投げて13失点。それでも5番打者として17打数8安打7打点とバットで存在感を示した。中山は14回1失点、佐宗は10回2失点。中山は「武内には助けてもらってきた。その分、ここで恩を返せた」とブルペン一丸の勝利を強調した。

  ●遊学館の吉田力投 「集中できていた」

 ○…遊学館の村松杏慈は一回先頭打者を三振に仕留めた後、3連打で2点を失い「苦しくなった」。春の大会の雪辱を果たせず「相手が全てにおいて力が上だった」と唇をかんだ。

 母洋美さん(43)は「食が細いから。少しでも疲労回復に」とささみのスープを作って送り出した。甲子園は逃したが、背番号1でチームを引っ張った息子に拍手を送っていた。

 村松からバトンを受けた1年の吉田成希は「集中できていた」と5回1/3を5安打1失点と力投し、六回に同点二塁打を放った。父昌洋さん(45)は「いつもより燃えていた」と目を細めた。

  ●「楽しむ野球 やってくれた」 遊学館・中川監督

 遊学館の中川光雄監督は目を赤くしながら「最初はまとまりのないチームだったが、松村(拓武)が主将としてまとめてくれた。楽しむ野球をやってくれた」と振り返った。

 中川監督は1995年夏に星稜の三塁手として準優勝に貢献。遊学館では部長を経て2年前に監督に就任した。打倒母校はかなわずも「あと一歩だった。1、2年生がやってくれる」とうなずいた。

 ◇決勝

 星 稜311000010―6

 遊学館102011000―5

(星)武内、佐宗、中山―近藤(遊)村松、吉田、松岡―苅安▽本塁打 萩(星)▽三塁打 近藤(星)▽二塁打 萩原、武内(星)川場、吉田(遊)

  ●萩、二回本塁打

  ●星 稜6―5遊学館

 ○…星稜は一回1死一、三塁で近藤真亜久の三塁打などで3点を先制。二回は萩颯太のソロ本塁打、三回は押し出しで5-1とした。六回に追いつかれ、八回に萩原獅士の中前打で勝ち越し。先発の武内涼太が五回途中4失点で降板した後、佐宗翼、中山敦が六回以降は1失点に抑えた。

 遊学館は三回に吉本翔磨の右前打などで2点を返し、六回に吉田成希の二塁打で同点に追いついたが、八、九回は三者凡退に終わった。

2連覇を果たして歓喜する星稜ナイン
二回、遊学館の村松から本塁打を放つ星稜の萩
試合後、目を潤ませた星稜の山下監督
2番手で5回⅓を1失点と好投した遊学館の吉田
8年ぶりの優勝を逃し、うなだれる遊学館ナイン

© 株式会社北國新聞社