高校野球 圧倒的な投球で、チームを勝利に導いた中山敬斗(明豊3年) 【大分県】

圧巻の投球だった。全国高校野球選手権大分大会の準決勝、決勝の先発マウンドに立った明豊の中山敬斗はエースの役割を果たし、3年連続9度目の優勝の立役者となった。「大会前から圧倒的なピッチングをすると公言し、プレッシャーになっていたが、勝って良かった」と笑った。

準決勝は8回を被安打4、1失点。中1日で迎えた決勝は9回を被安打2で完封した。川崎絢平監督は決勝の投球を「最後まで投げ抜いた。これまで見た中でベストだった」と評価した。準決勝は118球、決勝は119球の数字が示す通り、中山は制球力があり、テンポがいい。「力感がなく、バランスがいい。連投できる能力がある」(川崎監督)。最速147キロのストレートと、川崎監督に「高校トップレベル」と言わしめたキレのあるスライダーを操る。

決勝は119球を投げ被安打2で完封した

今大会からエースナンバー「1」を背負う中山は、1年時から甲子園のマウンドに立ち、脚光を浴び続けてきた森山塁(3年)をライバルとしてきた。「森山に追いつき、追い越したい」という思いが原動力となり、黙々と練習してきた。この冬は上半身、下半身を鍛え直し4キロの増量に成功した。研究熱心であり、投球の間の使い方や変化球を磨くために自分が投げた試合の動画を何度も見直し、課題を見つけて修正してきた。自他ともに認める負けず嫌いで、川崎監督には「森山を使うなら俺も使ってください」と先発を直訴したことも一度や二度ではない。そんな中山の熱意を川崎監督は頼もしく思った。「春先から球に力が出てきた。マウンドでの振る舞いは自信にあふれていた」と、エースナンバーを託した。

2度目の甲子園では、昨年8月の練習試合中に不慮の事故で亡くなった吉川孝成(当時2年生)の思いを背負って投げるつもりだ。高校に入学して不安を感じていた時期に、捕手だった吉川にボールを受けてもらい「お前、すごい球を投げるな」と言われ自信になった。今大会でもピンチの場面で「孝成のあのときの言葉を思い出し、力に変えた」。これからも一緒に戦うつもりだ。

甲子園でも決勝のようなピッチングをしたいと語った

(柚野真也)

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