合併かなわなかった兵庫・市川、投資先送りが重荷に ごみ処理施設選んだ集落「反対あった。でも資金必要」

ごみ処理施設の建設計画が進む地域。小さな集落も生き残りをかける=市川町浅野

 兵庫県市川町長選、町議選は8月1日告示、6日投開票される。18年前、近隣自治体との合併に活路を見いだしたもののかなわず、単独での町政運営を続けてきた町はこの先、どのような未来を描くのか。現状と課題を探った。(喜田美咲)

    

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 市川町浅野区。町域のほぼ中央、山あいの小さな集落に41戸100人あまりが暮らす。県内2番目に人口の少ない同町の中で、最も人口が少ない集落だ。そのはずれの山裾で、2028年4月の稼働を目指し、ごみ処理施設の建設計画が進んでいる。

 「最初は集落の中でも反対する人はいた。けれど、浅野を持続させるためには資金が必要なんですよ」。浅野区の役員だった男性が口を開いた。

 ごみ処理施設は市川、福崎、神河の神崎郡3町でつくる事務組合が整備し、運営する。複数の候補地のうち、交通の利便性や地域の反対が少ないなどの理由で浅野区に決まった。

 交通量の増加などが見込まれる浅野区には、事務組合から2億円の地域振興交付金が入る。「農地を宅地に転用できないか」「公園で、町外の人と交流できるスポーツ大会を開きたい」-。地元ではどう生かすか模索が始まっている。

 住民の半数が70代以上という小さな集落は、町に頼らず、先細る地域を好転させようともがく。

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 市川町には苦い経験がある。財政難に苦しんでいた04年、合併で現状を打開しようと、合併協議を進めていた旧神崎、大河内の両町に合流を申し入れた。だがかなわず、神河町誕生の一方で、市川は翌年、単独町政の続行が決まる。

 財政の健全化を至上命令に、ハード整備は、新たな施設を控えるだけでなく、改修や道路整備も抑制。地域への投資を絞り込み、住民サービスにも影響が出た。地元産の卵やゴルフアイアンなどの返礼品が人気を呼び、ふるさと納税は年間3億円以上と好調だが、今も税収は伸び悩んでいる。

 ここにきて町財政の足かせになっているのが、財政健全化のため改修を控えてきた公共施設の老朽化だ。

 町内の小中学校やこども園7校園の給食を調理する「学校給食共同調理所」(市川町千原)は築35年。改修や建て替えの目安となる25年を優に超える。同町は近隣との連携で乗り切ろうと、神河町の給食センターとの共同運営に向け、機能を移せるか協議を進める。

 「財政的なメリットは大きい。文化ホールのような施設も広域で連携できればありがたい」と町職員。ただ、施設の集約や効率化は地域の雇用や魅力を奪う可能性も指摘される。

 財政負担の軽減と、地域の活性化。そのバランスが問われている。

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